電子制御という夢(その26)
テクニクスのSL10は、世界初のダイレクトドライヴのSP10誕生からちょうど10年目に登場している。
だから型番にも10がつき、SL10となり、価格も10万円。
さらには10月10日に発売されるという、10づくしのプレーヤーである。
SL10の登場の一年後、SL7とSL15が登場している。
ステレオサウンド 57号の新製品紹介のページで紹介されている。
岡先生が書かれている。
岡先生が新製品紹介の記事を書かれるのは珍しいことである。
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テクニクスのSL10が出て一年、その姉妹機のSL15とSL7が発表された。
予想されていたこととはいえ、SL10ファミリーの展開のテンポが早い。SL10の出現には本当にびっくりした。ぼくは、当時、あちらこちらで〝レコードプレーヤーの革命〟だというようなことを書いた。これは誇張でもなんでもない。半世紀もレコードをいじってきたものとして、このプレーヤーを見て操作してまっさきにうかんだ実感であった。SL10の第一歩はベートーヴェンの第五の開始のffのように颯爽としていた。それはまったくアレグロ・コン・ブリオそのもののような確信に満ちた足どりで歩みはじめた。そして、いまそのアレグロ・コン・ブリオは上声部と下声部を加え、充実感に満ちた和音進行へと展開しはじめた。時がたつにつれ、SL10ファミリーはさらに豊かな和声の響きをもつだろうが、そこまで先走りして考えることもあるまい。
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いま読み返してみると、岡先生としてはめずらしい書き出しであることに気づく。
それだけSL10の登場は、レコードとのつきあいの長い人ほど、革命に近いモノであったことが読みとれる。
ステレオサウンド 57号のこのページには、
SL10の開発者である小幡修一氏に岡先生が話を聞きに大阪まで出かけられ、
SL10開発に関する話も別枠で掲載されている。