Archive for category アナログディスク再生

Date: 6月 1st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その5)

ゲイルGT2101の振動実測データをみると、やっぱりな、と多くの人が思うことだろう。

「プレーヤー・システムとその活きた使い方」は、
当時の日本ビクターの音響研究所長の井上敏也氏の監修によるもので、
多くの実測データはビクターによる測定である。

Galeでのハウリングの実験とついている章では、ふたつの実装データが載っている。
ひとつは、ターンテーブルプラッター外周に三つあるレコードを支持する箇所に、
カートリッジを降ろしての測定、
もうひとつはレコード支持部間にカートリッジを降ろしての測定である。
つまりレコードが浮いている状態の測定となる。

レコード支持部での結果は25Hzにピークがあるがそれもそれほど大きくはない。
それ以上の周波数ではかなり低く抑えられていて、かなり優秀な特性を示している。

レコードが支持部から離れて浮いている状態だとどうなるのか。
21Hzと50Hzに大きなピークがある。
60Hz以上の周波数ではうねりが見られ、
あきらかにスピーカーからの音圧によってレコードが揺すられていることがわかる。

その状態であっても、マグネフロートが効果的に働いているのか、
アクリルというベースの特質なのか、面積をできるだけ抑えたベース形状のおかげなのか、
ハウリング特性は優秀である。

レコードを浮すと音が大きくなる、という人がいる。
カートリッジは振動を電気信号に変換するものだから、
レコードそのものがスピーカーからの音圧でゆすられ振動が大きくなっているのだから、
その振動も含めてカートリッジはピックアップして電気信号へと変換するのだから、
音が大きくなって当然といえよう。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その4)

「続コンポーネントステレオのすすめ」で、瀬川先生は次のように書かれている。
     *
 たとえば、イギリス・トランスクリプターの Transcriber や、同じくイギリスのゲイルGT2101のように、一種前衛彫刻を眺めるようなデザインの奇抜さは、他に類のないという点で、とりあげるに値するかもしれない。フランスのシネコMark2002は、前二者ほどユニークではないにしても、透明のアクリルベースの美しさがユニークだ。
     *
ゲイルもトランスクリプターも同じ時代に、同じイギリスから生れている。
《一種前衛彫刻を眺めるようなデザイン》に関しては、ゲイルのGT2101の方につよく感じる。

GT2101は大小の三角形から成り立っている。
この三角形は直線から成るものではなく、内側にカーヴしている三角形で、
アクリル製なので透明な三角形でもある。

大きな三角形がベースで、三つの頂点に脚部がある。
この脚部は希土元素酸化物マグネット使用のマグネフロート方式で、
そのためベース部分は二枚のアクリルが使われている。

ターンテーブルプラッターは小さな三角形で、レコードは頂点にある円形のステンレス、
スピンドル周辺の円形のステンレスの四点によって浮くことになる。

瀬川先生が挙げられているトランスクリプターもシネコも同じようにレコードを浮している。
シネコは外周の六点とスピンドルの計七点支持、
トランスクリプターは外周六点、スピンドルとその間に三点の計十点支持である。

レコードをターンテーブルプラッターに密着させない。
これは昔からアマチュアの間でも試みられている。
私もずっと昔に実験したことがある。
いまも、レコードは浮した方がいいと主張する人はいる。
エアーキャップ(通称プチプチ)をターンテーブルシート代りにする人もいる。

音に関してはあえて書かないが、
レコードを浮すことによるレコードそのものの振動についての実測データはある。
誠文堂新光社から出ていた「プレーヤー・システムとその活きた使い方」に、
ゲイルのGT2101を使った実測データが載っている。

Date: 5月 31st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その3)

1970年代、イギリスにゲイル(Gale)というメーカーが登場した。
輸入元はテレオンだった(スピーカーだけはオンライフが以前輸入していた)。

現在ゲイルは輸入されていないが、会社は存在している。
ウェブサイトを見ると、あの頃の意気込みはまったく感じられない、
別の会社になったかのようである。

当時のゲイルの製品はスピーカーシステムとターンテーブルが輸入されていた。

スピーカーシステムはGS401。
日本では、というよりもステレオサウンドではGS401Aが取り上げられていた。
GS401Aは横に長いプロポーションのブックシェルフ型だが、
しゃれたパイプ製の専用スタンドが用意されていた。

両サイドがクロームメッキされ、
フロントバッフルを囲むように黒のサランネットがエンクロージュアを一周している。
カラー写真でみると、黒とシルバー(というよりも輝く白ともいえる)のコントラストが、
とにかく印象に残るデザインだった。

GS401には通常の木製エンクロージュアのCタイプも用意されていた。
こちらは同じ内容ながら縦置きのブックシェルフ型。

GS401Aは、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’78」で、
亀井良雄氏による素敵な写真で確認できる。

最初スピーカーシステムが紹介され、しばらくしてターンテーブルのGT2101が登場した。
GS401A以上に、モダンな印象をあたえるターンテーブルだった。

GT2101は音の良いターンテーブルだったのかどうかはなんともいえない。
私が当時見たのは、さほど大きくないモノクロの写真だけ。
実物をぜひとも見たかったターンテーブルである。

Date: 5月 30th, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その2)

別項でラックスのPD121について書いた。
そこに、アナログプレーヤーにおける主役は、やはりレコードだと思う、と書いた。

PD121のように、無駄がなくシンプルな表情をみせてくれるアナログプレーヤーにふれると、
そのことを強く思うとともに、最近登場したアナログプレーヤーのいくつかは、
そのことを忘れてしまったのか、それとも気づいてさえいないのか、
アナログプレーヤーこそ(我こそ)が主役とでも言わんばかりの形相をしている。

そんなアナログプレーヤーでも音が良ければ気にしない人もいれば、
どうしても使う気になれないという、つまり私と同じ人もいる。

アナログプレーヤーは他のオーディオ機器と違い、
それ単体でデザインが完結するモノではない。
ターンテーブルプラッターの上にレコードがのせられ、回転する姿が美しくあるべきだ。

Date: 3月 9th, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その1)

スタートレックに登場するU.S.S. ENTERPRISE NCC-1701。
スタートレックをみるたびに、アメリカが生んだ最高のデザインのひとつだと思うとともに、
アナログプレーヤーに、このカタチをもってこれないだろうか、とも思ってしまう。

エンタープライズ号は建造物である。
アナログプレーヤーもまた建造物として捉えた方がいいのではないか。

これまでにいくつかの、そう捉えられるアナログプレーヤーが登場しているものの、
エンタープライズ号の域に達しているとは、まだまだいえない。

Date: 1月 18th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その17)

トーレンスの101 Limitedを使っていた時、
EMTの930st用のガラスターンテーブルと927Dst用のスタビライザーを手に入れた。

930st(101 Limited)はアルミ製のターンテーブルプラッターの上に、
プレクシグラス製のサブターンテーブルがのっている。
これを927Dstのそれと同じつくりのガラス製のモノに変え、
927Dst用のスタビライザーも併用する。

しばらくこの状態で聴いていた。
ガラス製ターンテーブルはそのまま使い続けた。
スタビライザーはというと、レーベルの上に乗せるという使い方はしなくなった。
けれど使わなくなったわけではない。

101 Limitedはトーンアームの真横に、45回転アダプターをおけるようになっている。
927Dstのスタビライザーは上下反対にすれば45回転アダプターになる。
だからスタビライザーは、この位置に置いていた。
つまりトーンアームとターンテーブルプラッターのあいだにスタビライザーがある。

ここにスタビライザーがあるとないとでは、音が違う。
私はここにスタビライザーを置く音をとった。
たいていはこの状態で聴いていた。
ときどき気が向けばスタビライザー本来の使い方をして聴いた。

このスタビライザーが二個あれば、トーンアームの真横に置きながら、
レコードの上にのせるかのせないかという使い分けもできたのだが、一個しか持っていなかった。

スタビライザーはなにもレコードの上にのせるだけが使い方ではない。
こういう使い方もある。

Date: 1月 18th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その16)

したり顔でスタビライザーを使うとレコードの鳴きを抑えてしまう、だからダメ、という人がいる。
スタビライザーはレコードのレーベル部にいわば重りを乗せるものであるからといって、
レコードの鳴きを抑えているといえるのだろうか。

レコード(LP)の直径は12インチ。スタビライザーの直径は7〜8cmのモノが多かった。
これだけのモノでレコードの鳴きを抑えることができるのならば、すごいことである。

それにスタビライザーはたいていの物が金属製だった。
金属といっても真鍮、銅、ステンレスなどがあった。
ガラス製もあった。
ゴムでダンプしてあるモノもあった。

どんなスタビライザーであっても、スタビライザー固有の音(鳴き)がある。
スタビライザーを使うと、スタビライザー固有の音も大なり小なり再生音に附帯して出てくることになる。

スタビライザーはレコードの鳴きの一部を抑えることはできているだろうが、
完全に抑えることなんて無理である。
なのに、スタビライザーの使用に徹底的に否定的な人は、レコードの鳴きを抑えるから、だという。

なぜ、こうも強引な理由をつけて、スタビライザーを使うことに対して白黒つけたがるのか。
音を聴いて瞬時にどちらがいいかを判断する。
これがカッコいいことだと思っているから、ではないのか。

スタビライザーはひじょうにプリミティヴなアクセサリーである。
使い方も簡単である。
だからこそもっともっと気楽につきあえばいいではないか。

その時の自分の感覚が使った方がいいと判断すれば使えばいいだけのことだし、
このレコードでは使わない方がいいと判断したのであるならばそうすればいい。

スタビライザーを使うこと(使わないこと)を楽しめばいいのに……、と思う。

Date: 1月 17th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その15)

スタビライザーを使うのがいいのかどうかについても同じことである。
あるレコードについては使った方がいいことだってある。
同じレコードであっても、カートリッジがかわれば使わない方がいいことだってある。

それにシステムの音も聴き手の感覚も毎日完全に同じではない。
ひとりの聴き手の朝と夜とでも違うように、常に変化しているのだから、
それに応じて柔軟に対処するのが、それができるのがアナログディスク再生の、
デジタルディスク再生に対しての大きな強みといえる。

スタビライザーにもいろんな種類がある。
それらを試して、これがいちばんいい、と思えるスタビライザーをえらぶのではなく、
それぞれのスタビライザーの音の傾向をきっちりと把握しておくことで、
同時にカートリッジとの相性をふくめて、その調整、それらの関係性の把握こそが、
アナログディスク再生の柔軟性を、聴き手が手にすることができる。

このことは針圧計で針圧をできるかぎり精密に測ることではない。
自分の感覚の把握でもある。

つまりあれこれ調整することで、
その時の自分の感覚に合せることは、自分の感覚を調整していることでもある。

アナログプレーヤー関連のアクセサリーをどう捉えるのか。
私は、こう捉えている。

Date: 1月 16th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その14)

アナログディスク再生とデジタルディスク再生。
このふたつの違いは、いろんな言葉で表現できる。

究極的には、アナログもデジタルも同じだと私は考えている。
だからといってアナログディスク再生とデジタルディスク再生が同じというわけではない。

デジタルディスク再生、
いいかえればCDプレーヤーの場合、ひとつのブラックボックス的要素が強い。
アナログプレーヤーにはブラックボックス的要素はほとんどないといえる。
機種によって、その辺の違いはあるけれど、
ほとんどすべての動作は視覚的に確認できるのがアナログプレーヤーである。

それゆえに調整箇所が多いのがアナログプレーヤーである。
CDプレーヤーでは、アナログプレーヤーでカートリッジを交換するようなことはできないし、
カートリッジの調整にあたる箇所もない。

つまりアナログプレーヤーによるアナログディスク再生は、
その時々の自分の感覚に応じて調整すること(融通をつけること)ができることが、
CDプレーヤーによるデジタルディスク再生との大きな違いである。

スピーカーから鳴ってくる音をきく聴き手は、いうまでも人間である。
機械がきくわけではない。
人間である以上、常に同じ状態ではない。
スピーカーから鳴ってくる音楽に気乗りしない時もある。身が入らない時もある。
上の空で聴いてしまいそうになるときがある。

そういう時、アナログにプレーヤーならば、その時の自分の感覚に合せるように調整することができる。
カートリッジの交換も、そう受けとめることができる。

このLPにはこのカートリッジで、というふうに決めておくのではなく、
むしろ、いま聴きたいレコードを、いまの感覚に合せてカートリッジを選択する、という聴き方である。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その19)

1970年代がおわろうとしていたころから、
ダイレクトドライヴ型プレーヤーの音質が問題になりはじめていた。
性能は確かに優れている。けれど音がどうもよくない……、そんなふうにいわれはじめてきた。

ベルトドライヴ、リムドライヴの、音がいいと評価を得ていたプレーヤーと比較していわれたのは、
まずターンテーブルプラッターが軽いからではないか、があった。
つまり慣性モーメントが小さい。そのことが音に影響を与えている、と。
それからモーターのトルクが弱いから、だともいわれはじめた。

けれど冷静にカタログに発表された値をみていくと、
ダイレクトドライヴ型のすべてのプラッターが軽いわけではない。
ベルトドライヴ、リムドライヴと同等のモノもあったし、
モーターに関してもトーレンスのTD125のようにかなり弱いタイプも、ベルトドライヴ型にはあった。

プレーヤーの音は、そんな部分的な値によって決ってしまうものではない。
ベース、サスペンション、その他のいくつもの要素が有機的に関係してのトータルの音質である。

それでも国産メーカーは、そんな声に反応してだろうか、
そんなことはない、と証明するためだろうか、
ターンテーブルプラッターの重量を増し、モーターのトルクも強くしていった。

たとえばテクニクスのSP10MK3のプラッターは銅合金+奄美ダイキャスト製で、重量は10kg。
デンオンのDP100のプラッターは6.5kg、オンキョーのPX100Mは銅合金削り出しで10kg、
これらは重量級のダイレクトドライヴである。

これだけの重量物を回転させるのだからモーターのトルクも高い。
いま、これだけのモノがつくれるだろうか、と思える。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その18)

コマをまわすときのことを考えてみる。
小さなコマであれば中心の軸を指でまわす。
これでけっこうまわる。

けれど大きなコマ(重量のあるコマ)になってくると、
中心の軸を指でまわすことは大変になってくる。
だからコマの周囲にヒモを巻きつけて、
そのヒモを思いきり引っ張ることでコマに回転を与える。

ターンテーブルプラッターを指で廻そうとする時、どこに指を置くか。
ほとんどの人が外周のところに指をおいて廻す。
わざわざスピンドル近くに指を置いて廻そうとはしない。

同じ回転数で廻そうとしたら、外周よりも内周のほうが指の移動距離は短くなる。
つまり外周であれば内周よりも速く廻さなければならない。
それでも外周を選ぶ。

楽に廻せるからである。

ダイレクトドライヴは理想の方式のように思える。
モーターの回転をそのままターンテーブルプラッターにつたえて廻す。
けれどモーターのシャフトはターンテーブルプラッターの中心でもある。

つまり、指で廻す時にもっとも力を必要とする最内周にあたる。

Date: 1月 10th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その13)

針圧計に精度の高さを求めるのは、何かを決定したい行為なのかもしれない。
いい感じで鳴るポイントを見つけ出した。
それを針圧で記憶する。
次にそのカートリッジを使う時にも、その針圧にぴったりと合わせる。

アナログプレーヤーのアクセサリーは昔からいろんな種類がある。
そのひとつにディスクスタビライザーがある。

スタビライザーはレコードのレーベル部分にのせる、なんらかの素材による重しである。
昔は素材も重量もいろんな種類があった。
重量によるモノ以外にコレットチャック式のモノもあったし、吸着式のモノもあった。
プレーヤーによってはスタビライザーが標準装備のモノもいくつかあった。

昔からアナログディスク再生に熱心な人であるなら、
スタビライザーをひとつは持っていると思う。
そんなに高価なアクセサリーでもなかったし、レーベルのところにのせるだけだから、
結果が好ましくなければ使わなければ、それでいい。

つまり元の状態に簡単に戻すことができる。
手軽に試させて、音の変化も確実にある(よいと感じるかそうでないかは別として)。

このスタビライザーに関しても、決定しようとする人がいるように思える。
あるレコードで、スタビライザーのあるなしの音を比較試聴する。
どちらがよいかを判断して、スタビライザーありでいくのか、なしでいくのかを決定する。

けれど、これも決定するようなことだろうか。
スタビライザーありの音、なしの音を、いろんなレコードで聴いておく。
いい悪いを判断するためではなく、自分の中に判断材料・基準をつくっておくためにも聴いておく。

そうすれば、少なくとも自分のシステムにおいて、
このレコードのときにはあったほうが好ましく聴ける、
別のレコードではないほうが好ましい、という判断はすぐにつくようになる。

ならばスタビライザーをのせたほうがいいと判断したらのせればいいだけの話で、
どのレコードに関してものせるかのせないかを決定するようなことではない。

Date: 1月 10th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その12)

アナログディスク再生に関すること全般にいえるのは、柔軟性が必要だということ。
針圧の調整にしても、新品で買ってきたカートリッジをとりつけて音を聴く。
最初は私だって標準針圧にあわせて聴く。
聴いてすぐに針圧を調整したりはしない。

レコードを何枚か、その状態で聴いてみる。
針圧を下限・上限まで変化させてみるのは早くてもその後であり、
新品のカートリッジを聴きはじめた、その日のうちに細かな調整はしない。

しばらく使っている(その音を聴いている)と、
なんとなく針圧を含めた調整をしたほうがいいかな、と思える時がある。
そういう時に、こまかな調整をしっかりとやる。

それでいい感じで鳴ってくれる針圧があったとする。
それをメモするようなことは、前にも書いたように私はしない。

その数値をどこまでも正確に計り、次にそのカートリッジを取り付けた時に正確に同じ数値にしたところで、
同じ音には鳴らない。
さまざまな要素によって、音は微妙に変化しているから、
それでもいい感じで鳴ってくれるポイントをまた出そうとしたら、
以前の数値にはもうこだわらないことである。

音を聴いて、どうしたらいいのか、瞬時に判断するものである。
そんな判断は、すぐには身につかない。
だから気に入ったカートリッジが見つかったら、あれこれいろんな調整を辛抱強くやってみるしかない。
そうやって感覚量を身につけるしかない。

オーディオのプロフェッショナルではないのだから、自分の好きなカートリッジに関して、
そういう感覚を身につければいい。
それは針圧計が示す数値とは関係のないものだ。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その11)

日本人はマメだ、といわれる。
カートリッジのことに関しても、レコードごとにカートリッジを交換することもある、
そういう話をきくとマメだな、と思う。

私はすでに書いているように交換することはしなかった。
結局EMTのTSD15でずっと聴いていた。

ときどきは、あのカートリッジでこのレコードをかけたら……、と想像はするけれど、
想像だけでもいいや、というところがある。

こんな私は、カートリッジをマメに交換しているひとからすれば、
マメじゃないマニア、ということになる。

けれど、気に入ったカートリッジを最適に調整することに関しては労を惜しまない。
針圧調整をはじめとして、細かな調整をきっちりとやっていく。
その意味では、マメといえる。

そういうマメさからすれば、カートリッジを頻繁に交換している人に対して、
そこまで細かく調整しているのですか、と問いたくなる。

こんなことを書いている私だが、ここまで調整するようになったのは、
ステレオサウンドの試聴室で井上先生に鍛えてもらったおかげである。
この経験がなければ、徹底的に調整をつめていくことは、
このへんだろう、このくらいやればいいだろう、と、自分の中だけの基準でやっていただけかもしれない。

カートリッジ、アナログプレーヤーの調整は、そんなレベルではすまない。
しかも、そこまでくると感覚量こそが大事になってくる。
針圧ひとつとっても、針圧計が示す数字にとらわれたり、頼ったりしていては、まだまだだといえる。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その10)

アナログディスク全盛時代、カートリッジの平均所有本数は日本人がいちばん多い、ということがいわれていた。
アメリカ、ヨーロッパにもオーディオマニアは大勢いる。
けれど彼らの多くは、頻繁にカートリッジを交換するようなことはしない。
そんなこともいわれていた。

ほんとうだったのどうかははっきりとしない。
でも、SME式のプラグインコネクターが普及していたのは、
というよりもほぼ標準規格といってもいいほどなのは日本だけで、
そのことも影響して、アメリカ、ヨーロッパではレコードごとのカートリッジ交換は一般的ではなかった。
こんな話もきいている。

たしかにそうなのかもしれない。
マークレビンソンのLNP2は、入出力端子にスイスのLEMO社製のコネクターに変更したさいに、
型番の末尾にLがつくようになった。
これは日本だけのことで、他の国で売られていたLNP2(他のアンプも含めて)には、
LEMOコネクターになってからも、Lはついていなかった。

並行輸入対策としての型番末尾のLであった。
いわば日本仕様であり、日本仕様はこれだけではなかった。

初期のLNP2はPHONO入力は一系統のみだった。
それが途中からPHONO1、PHONO2となった。
これも日本のみである。

輸入元のRFエンタープライゼスの要望で、日本にはアナログプレーヤーを複数台使っている人、
ダブルトーンアームの人が少なくないから──、ということだったらしい。

私としては微小入力のPHONOに、
接点がひとつよけいに透ることになるのだから、PHONOは一系統のほうがいいのに……、と思うのだが、
あのころの日本で、LNP2を買える層はそうではない人が多かったということになる。