メリディアン ULTRA DACで、マリア・カラスを聴いた(その6)
黒田先生は、「オペラへの招待」のカルメンの章の冒頭に、こう書かれている。
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「恋って、いうことをきかない小鳥のようなもの、飼いならそうとしたって、そんなこと、誰にもできない」
カルメンは、そのようにうたう。カルメンがその登場の場面でうたう「ハバネラ」の冒頭である。この歌であきらかにされるのは、カルメンの、大袈裟にいえば人生観、あるいは恋愛観である。
「掟なんて、しったことではない。わたしを好きになってくれなくったって、わたしのほうで好きになってやる。わたしに好かれたら、気をつけたほうがいいよ!」
カルメンは、「ハバネラ」で、こうもうたう。
では、カルメンとはなにものか?
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カルメンとはなにものなのか?
マリア・カラスによる「ハバネラ」は、この問いへの答を見事に表現している。
今回、ULTRA DACでマリア・カラスの「ハバネラ」を聴いて、実感できた。
マリア・カラスの名前は、クラシックに興味を持つ以前から知ってはいた。
名前だけではある。
カラヤンの名前よりも先に知っていた。
マリア・カラスの録音で最初に買ったのは「カルメン」である。
それでも「カルメン」の録音で、マリア・カラスの「カルメン」よりも、
アグネス・バルツァの「カルメン」の方を聴いた回数は多かった。
「オペラへの招待」でも、
黒田先生は「カルメン」の推薦ディスクとしてあげられているのは、
バルツァによるカルメン、カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニーによる録音と、
ベルガンサ、アバド指揮ロンドン交響楽団による録音である。
マリア・カラスの録音ではない。
私はロス・アンヘレス、ビーチャム指揮フランス国立管弦楽団による録音も好きなのだが、
バルツァ盤を20代のころ聴いていたのは、録音のよさも関係してのことだ。
そのころの私は、カラスの「カルメン」をそれほどうまく鳴らせていなかった。
そういえばアグネス・バルツァはギリシャ人である。
マリア・カラスはギリシャ系アメリカ人である。
ギリシャの血をひく歌手が、カルメンには向いているのか。
それはともかくとして、今回ULTRA DACで、カラスの「ハバネラ」を堪能できた、とさえ感じている。
これは私だけではなかったようだ。
それでも、まだマリア・カラスをMQAで聴いたわけではない。
e-onkyo musicのサイトでは、マリア・カラスのスタジオ録音がMQAで配信されている。
通常のCDとMQA-CDの違いは、すでに知っている。
まだ先がある。