Date: 8月 8th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RS-A1のこと・その5)

RSラボの回転ヘッドシェル、RS1が登場したのはいつだったか。
1980年代の後半だったか。
とにかく、その頃の私がつかっていたアナログプレーヤーではRS1は使えない。
なので、友人に買わせた。

オーディオテクニカのヘッドシェルをベースに回転ヘッドシェル改造したものだから、
オーディオテクニカのヘッドシェルよりも高かった。
自分で買ったものでもないということもあってうろ憶えだが、一万円くらいしたのではなかったか。

それでも、友人はノってくれた。

RS1のシェルリード線は、細い。
オーディオテクニカのヘッドシェルにもともとついていた線よりもずっと細くしなやかである。
カートリッジの取り付け時にうっかりすると断線させてしまう人もいるかもしれない、
と思うほどの細さのように記憶している。

とにかく友人の標準カートリッジを取り付けて、レコード盤面に針を降ろす。
音溝に対して接線方向にカートリッジが向く。

頭でわかっていたことでも、こうやって目の前で回転ヘッドシェルが動作しているのをみてしまうと、
カートリッジには、これだけの力が加わっていることを視覚的に確認できる。

音は、通常のヘッドシェルに取り付けた時の音とは、あきらかに違うものを感じさせる。
そのころのラジオ技術では、発案者の三浦軍志氏だけでなく、
ほかの方たちも追試の実験、記事の発表をやられていた。

RS1の音(回転ヘッドシェルの可能性)を聴いてしまうと、
そういう気持になるのもわかる気がした。

Date: 8月 7th, 2013
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(facebookにて・追補)

「オーディオ彷徨・改訂版」は書店売りはしていない。
ステレオサウンドに直接注文するか、Amazonへの注文しかない。
だから、これから買う人は、5月30日に出た方を手にすることはまずない。

けれど、新宿のディスク・ユニオン隣の書店「BIBLIOPHILIC」では、
この4オーディオ彷徨・改訂版」を売っている。
ただ先月中旬、ここで売られていた「オーディオ彷徨・改訂版」は5月に出たものだった。
7月に増刷された分ではなかった。

なので、「BIBLIOPHILIC」のように売っているところで購入される方は、
奥付を確認された方がいい。

Date: 8月 7th, 2013
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(facebookにて・その14)

やりたい仕事を常にやれるとは限らない。

「オーディオ彷徨」が出た1977年、私はまだ高校生だった。
2013年、「オーディオ彷徨」が復刊されたが、私はとっくにステレオサウンドから離れている。

「オーディオ彷徨」に、だから私は携わることはできなかった。

けれど、今回岩崎先生の原稿を直接手にとることが出来、
しかも「オーディオ彷徨」に所収される時点で書き換えが行われていることを見つけ、
そのことをfacebookに書いたことで、結果として訂正されることになった。

つまり7月に増刷された「オーディオ彷徨」には、間接的にはあっても携われた、という感触がある。
これが、ふたつめの嬉しいことである。

もし私がずっとステレオサウンドで働いていて、
「オーディオ彷徨」を復刊させようとしたとしても、
1977年に出た「オーディオ彷徨」の、明らかな箇所以外は訂正することができずに、
そのまま踏襲して出すことになる。

このことに思いを馳せると、ステレオサウンドから離れたから、ということにたどりつく。

ステレオサウンドにあのままい続けていたら、audio sharingをつくることはなかった。
audio sharingを公開していなければ、岩崎先生のご家族と連絡をとれることが訪れることはなかった。
そして世の中にSNSというものがあらわれ、facebookに「オーディオ彷徨」というページをつくった。
(現在は「岩崎千明/ジャズ・オーディオ」に変更している)

この「岩崎千明/ジャズ・オーディオ」に「いいね!」をしてくれる、
元オーディオメーカーに仕事をされていた方たちがいた。

昨年5月、毎月第一水曜日に四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記で行っている例会に、
岩崎先生の娘さんと息子さんが来てくださり、「岩崎千明を語る」というテーマを行えた。
今年6月には「岩崎千明と瀬川冬樹がいた時代」というテーマで行えた。
ここで、岩崎先生の原稿と出合えた。

「オーディオ彷徨」の復刊にあわせて、岩崎先生の原稿がぽっと私の前にあらわれたわけではない。
これらのことをやり続けてきたから、の結果だという感触は、私だけのものだろうか。

Date: 8月 7th, 2013
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(facebookにて・その13)

facebookグループのaudio sharingで、ステレオサウンドのNさんのコメントはもう少し続いた。

私が指摘した箇所だけではなく、他にも気になるところがあるので、
岩崎先生の原稿をコピーして送ってほしい、ということだった。

コンビニエンスストアに行きコピーするのがいちばん楽なのだが、
それでは私とステレオサウンドのNさんだけしか見れないことになる。

なので原稿をスキャンすることにした。
300dpiでスキャンした。
私がもっているスキャナーはA4までしかスキャンできないから、
400字詰め一枚の原稿用紙をスキャンするには、二回にわけて半分ずつスキャンして、
画像処理で一枚の画像にする。
この作業が意外と面倒なのだが、岩崎先生の原稿は前にも書いているように片桐さんから借りているものだから、
こうやってスキャンして画像処理しておかなければ私のところにもデータとして保存できないのだから、
遅かれ早かれ、この作業はやるつもりだった。

こうやって岩崎先生の原稿をスキャン作業は終り、
すべての家蔵を圧縮してダウンロードできるようにしている。
ステレオサウンドのNさんだけでなく、興味のある方みんなに見ていただきたいから、そうした。

jpeg画像だから、誰でも見れる。
ダウンロード先は、上記のfacebookグループのaudio sharingのコメント欄に書いている。
facebookのアカウントを持っている人、
しかも私が管理しているfacebookグループのaudio sharingに参加されている人、
という制限はつけさせてもらった。

Date: 8月 7th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(シェルリード線のこと・その5)

電源コードを交換すれば音は変る。

家庭用のAC100Vが発電所から部屋のコンセントに届くまでのあいだに、
どれだけの距離を通り、どれだけのものを通っているのかを考えれば、
いくら電源コードが1mとか2mとか、シェルリード線に比べれば長いとはいえ、
発電所からの長い距離の中で見れば、その割合はシェルリード線よりも小さい。
にも関わらず電源コードを交換すれば、音は変る。

AC100Vに関しても、理想をいえば100Vの発電機が近くにあり、
その発電機のコイルから直線銅線がのびていて、途中ブレーカーやコンセントなとの接点を経由せず、
できれば発電機から伸びてきている銅線で、電源トランスの一次側のコイルを巻く、ということになる。

こんなことは実際にはできないことだけど、これを理想とすれば、
現実の電源の供給には、途中途中にいくつものものが挿入されている。
カートリッジの信号をアンプの入力端子に伝送する系と同じように、だ。

だからこそ、電源コードで音が変るのだ、と私は考えている。

つまりどちらも理想の状態からは遠く離れている。
いくつものモノが挿入されている。そのことによって崩れているなにかがある。

つまり、私達がリスニングルームでやっていること、
シェルリード線を交換すること、電源コードを交換することは、
なんとか整合性をとろうとしている、つじつまをあわせそうとしている、
そういう行為のように感じている。

全体からみれば、そんな細かい(短い)ところを交換しても……、
とこんなふうにケーブルの交換に昂ずるのを批判的に見ている人もいるけれど、
そうとも一概にはいえない。

昂じている人がどういう意識でやっているのか、
傍から見ていてはわからないところもある。
ただ音の変化を楽しんでいるだけなのかもしれないし、
無謀ともいえるかもしれない整合性の確保、つじつまあわせをしているのかもしれない。

Date: 8月 6th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(シェルリード線のこと・その2について補足)

エラックのSTS455Eの仕様について、資料があったはず、と探してみた。
見つかった。
1976年に誠文堂新光社から無線と実験別冊としてでた「プレーヤー・システムとその活きた使い方」、
この本の207ページに一欄表が載っている。
国産・海外カートリッジの代表的なモデルの、直流抵抗、インダクタンス、
1kHz、10kHz、20kHzの電気インピーダンスの計算値が表になっている。

STS455Eの直流抵抗:1310Ω、インダクタンス:508mH、
インピーダンス:3.5kΩ(1kHz)、32kΩ(10kHz)、64kΩ(20kHz)、
以上のことから、MM型カートリッジとしてもハイインピーダンス型といえる。

同じエラックの4チャンネル再生用のSTS655-D4の値は、
それぞれ652Ω、216mH、1.5kΩ、14kΩ、27kΩである。

エラックとともにMM型カートリッジの特許をもつシュアーの代表的モデルといえばV15 TypeIIIの値は次の通り。
1350Ω、434mH、3.0kΩ、27.3kΩ、55kΩとSTS455Eと近い値となっている。

同じMM型でも国産カートリッジは、エラック、シュアーより、全体的にローインピーダンス寄りといえる。

Date: 8月 6th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(シェルリード線のこと・その5)

現実のアナログプレーヤーの信号伝送経路を子細にみていくと、
まず発電コイルからの引き出し線がカートリッジの出力ピンにハンダ付けされる。
ここでまず出力ピンという異物がひとつ加わることになる。

この出力ピンにシェルリード線がハンダ付けされることはまずなく、
シェルリード線の両端には金属製のカシメがつけられる。
ここでもカシメ、それにシェルリード線という異物が加わる。
ヘッドシェルのプラグ部分にも金属製のピンという異物がある。

ヘッドシェルの出力ピンと接触するトーンアーム側のプラグイン・コネクターにも接点ピンという異物があり、
トーンアームパイプ内の配線と接続されている。
このパイプ内部配線がトーンアームの出力端子までいき、そこで出力端子の接点へとハンダ付けされる。
ここから先はトーンアームの出力ケーブルがあり、
このケーブルの両端にはRCAプラグがついているわけだから、
同じように異物が存在することになる。

ざっとこれだけのモノがカートリッジの発電コイルからアンプの入力端子までの経路である。
カートリッジの発電コイルからそのまま配線を長くしていった理想の在り方からすると、
なんと多くの異物が途中途中に挿入されていることになる。

しかも実際にはハンダが含まれ、接点箇所には接点ならではの微細な異物もある。

私は、これがたった数cmのシェルリード線を変えても音が変ることの理由ではないか、と考えている。

Date: 8月 6th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(シェルリード線のこと・その4)

それぞれに謳い文句があり、しかも価格もそれほど高価ではない。
アントレーのSR48は500円と安価な方だった、高価なものもあった。
けれど高価といっても、シェルリード線の長さということもあって、手軽に交換が楽しめる範囲におさまっていた。

私は前述した理由でシェルリード線の交換にはまることはなかったけれど、
このカートリッジには、このヘッドシェルとこのシェルリード線を組み合わせて、
このレコードを聴く──、
そんな音づくりの楽しみ方もあっただろう、とは思う。

トーレンスの101 Limitedを早々と買ってしまい、
カートリッジ交換の楽しみから遠いところにある環境になったため、
こういう楽しみ方をすることはなかった。

もしSMEの3012-R Specialを使い続けていたら、
そういう楽しみ方をしただろうか……、と、ふり返る。

とにかく各社から登場してくるシェルリード線を見ていて思っていたのは、
理想としてのシェルリード線の在り方についてだった。

おそらく理想はカートリッジの発電コイルに使っている銅線(もしくは銀線)が、
そのままシェルリード線になっていくことのはず。
そして、これを突き進めていくと、さらに延長し、そのままトーンアーム・パイプ内の配線となり、
さらにトーンアームの出力ケーブルまで延ばすことになる。

つまり発電コイルからアンプの入力端子まで、一本の銅線(銀線)が途切れることなく続いている、
つまり接点もどこにも存在しないし、途中に他の物質が挿入されるわけでもない。
これが、シェルリード線の理想の在り方だと仮定すれば、
現実のアナログプレーヤーの信号伝送系のケーブルと接点は、ずいぶん遠いところにあった、といえよう。

Date: 8月 6th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(シェルリード線のこと・その3)

アントレーのSR48に交換したことが、
すべての面でよい方向になったわけではないが、それでも音の変化は確認できた。
わずか数cmのシェルリード線を交換しただけで、音は変る。

シェルリード線はぎりぎりの長さになっているものは少ない。
長さ的に余裕があり、通常の使用ではシェルリード線がまっすぐになることはない。
あまっている長さの分だけカーヴすることになる。

SR84はリッツ線ゆえにカーヴすると芯線がバラける傾向があった。
それが気になっていた。

SR48はどのくらい使っていただろうか。
そんなに長くはなかった。
ヘッドシェルを、オーディオクラフトから出たばかりのAS4PLにしたまでの間だけだった。

AS4PLにはオーディオテクニカのMG10についていたシェルリード線よりも、
見た感じの立派なモノがついていたし、
たしか片側がハンダ付けされていたため、シェルリード線の交換ができなかった、はず。

MG10 + SR48でエラックのSTS455Eを使うよりも、AS4PLに取り付けたほうが好ましかった。
その後に新たに購入したオルトフォンのMC20MKIIも、AS4PLに取り付けて使っていた。

このオーディオクラフトのAS4PLが、私にとっての標準ヘッドシェルになっていった。
もしAS4PLを使っていなければ、各社から発売されていた各種のシェルリード線にはまっていっていた、だろう。

さまざまなシェルリード線が、あのころはあった。

Date: 8月 6th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(シェルリード線のこと・その2)

はじめてシェルリード線を交換した時につかっていたカートリッジは、
エラック(エレクトロアコースティック)のSTS455Eだった。
ヘッドシェルはオーディオテクニカ製だった。
おそらくMG10だったはず。

MG10は当時2200円。
シェルリード線は、当時もっともよく見かけていたタイプがついていた。
細めのケーブルで、赤緑白青の四色に色分けされていた。
これが、いわば標準だった。
これを、アントレーのSR48に交換した。

MM型カートリッジは、MC型カートリッジよりもコイルの巻数が多い。
発電コイルの直流抵抗は500Ω、インダクタンスは500mHあたりが標準だといわれていた。
国産のカートリッジの中には、ローインピーダンスを謳っていなくとも、
直流抵抗がその半分程度のものがいくつかあったし、インダクタンスも低めのものがあった。
反対に海外製の中には、直流抵抗が1kΩをこえるタイプもあった。

エラックのSTS455Eがどのくらいの直流抵抗とインダクタンスだったのかは知らないけれど、
大ざっぱにいえば海外製のMM型カートリッジは直流抵抗、インダクタンスともにやや高め傾向にある。

STS455Eもそのタイプだと仮定すれば、発電コイルに使われている銅線の長さはかなり長くなる。
トーンアームのパイプの中を通っているケーブルもシェルリード線よりも長い。
しかもコイルとパイプ内のケーブルはかなり細い。
トーンアームからアンプまでは、またケーブルが存在する。

こうやって考えると、カートリッジのコイルからアンプの入力端子までに、
四種のケーブルが最低でも存在する。
シェルリード線は、その中で、もっとも短い。
そんなシェルリード線なのに、交換すれば音は確実に変る。

Date: 8月 6th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(シェルリード線のこと・その1)

1970年代後半には、ケーブルで音が変ることが浸透し始めていた。
とはいえメーカーからは、それほど多くのケーブルが出ていたわけではなかった。

ステレオサウンドが当時毎年二回発行していたHI-FI STEREO GUIDEの’77-’78年度版をみると、
スピーカーケーブルを発売していたのは国内の11社、
トーンアームの出力ケーブルは国内3社、
まだまだこのくらいだった。

シェルリード線に関しては、アントレーだけだった。
SR48という型番のリッツ線だった。
価格は4本1組で500円だった。

実はこれが私にとって、最初のケーブル交換の体験でもあった。
理由は簡単だ。
500円と安かったからで、高校生の私にとってはこれは大きなことだった。

SR48は芯線の一本一本を絶縁した構造で、
芯線の撚りはけっこうあまかった、と記憶している。

ケーブルで音が変る──、
けれど自分のシステムでほんとうに音が変るのか、
変ったとしても、自分の耳にそれがわかるのだろうか、
そんな不安めいたことも思いつつも、
これでどのくらい音が「良くなる」んだろう、と期待しながら、
シェルリード線の交換をしていた。

Date: 8月 5th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RS-A1のこと・その4)

回転ヘッドシェルの音をいちどでも聴いている人ならば、
1997年1月号のラジオ技術のコンポ・グランプリの座談会で語られているRS-A1の音を、
ある程度は具体的に想像できるのではないだろうか。

ラジオ技術に回転ヘッドシェルの記事が載った時、
おもしろそうだと思いながらも、回転ヘッドシェルを実現するには、シェルリード線がいわば邪魔な存在となる。

回転ヘッドシェルはカートリッジがヘッドシェルにしっかり固定されているわけではなく、
いわばサブヘッドシェルにカートリッジを取り付け、
このサブヘッドシェル部分が水平方向に回転する構造になっている。

つまりカートリッジを回転しているレコード盤面に降ろせば、
カートリッジは音溝に対して接線方向を向く、という原理だ。

シェルリード線は、その回転をさまたげる存在となる。
音質向上のために、このころは各社からいろんなシェルリード線が発売されていた。
そういったシェルリード線では硬すぎるし太すぎるし、
回転ヘッドシェルにはとうてい使えない。

回転ヘッドシェル用には、細くしなやかなリード線でなければならない。
実は、この点が気になっていた。
特にローインピーダンスのMC型カートリッジの場合、
わずか数cmとはいえ、細いリード線を使うことが、どういう影響を与えるのか、
まずそのことが気になってしまった。

とはいえ回転ヘッドシェルは気になっていた。
最初の記事が出てから、どのくらい経ってからだったか忘れてしまったが、
ラジオ技術から回転ヘッドシェルが登場した。
RS1という型番で、オーディオテクニカのヘッドシェルを改造したモノだった。

Date: 8月 5th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RS-A1のこと・その3)

RSラボのトーンアーム、RS-A1は、ラジオ技術の「ベスト・ステレオ・コンポ・グランプリ」に選ばれている。
1997年1月号において、である。
選考委員は菅野沖彦、長岡鉄男、若林駿介、高橋和正、石田善之、金井稔の六氏。

記事は座談会をまとめたもので、
この座談会を読んでいない人には、ラジオ技術が自分のところのトーンアームをコンポ・グランプリに選出している、
お手盛りじゃないか、そんなものは信用できない、と思われるかもしれない。

けれど座談会を読んでいけば、このRS-A1というトーンアームが、
どういう存在意味をもっているのかが理解できるはずだし、
それが理解できれば、コンポ・グランプリに選ばれたことにも納得できる。

座談会を読めばわかることだが、
RS-A1というトーンアームの存在意味について、積極的に評価されているのは菅野先生である。
意外に思われる方もいるはずだ。

RS-A1の写真を見れば、菅野先生が高く評価されるようなつくりをしていないことはすぐにわかる。
それについては、菅野先生も指摘されている。
それでも、RS-A1への評価は高い、といえる。

座談会は若林氏の「RS-A1はおもしろかったし、よかったですよ。」から始まる。
続けて菅野先生が語られている。
     *
いろいろな音のアームがあっていいという面からも評価できるし、「エッ、こういうやりかたがあるの」というコロンブスの卵的発想のおもしろさもある。正直いってこれで商品として魅力のある造りなら5点を出してもいいんてず。それが残念だね。
     *
RS-A1は、どういうトーンアームで、どういう音を聴かせるのか。
これが実に興味深い内容の座談会になっている。

Date: 8月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RS-A1のこと・その2)

カッターレーサーの胸像こそがアナログディスク再生のプレーヤーの理想のように思い込んでいた時期が、
私にもある。

リニアトラッキングアームこそが、トーンアームの理想であり、
いかに理想に近いリニアトラッキングアームを考え出すか。
そんな時期もあった。

ステレオサウンドにいれば、各社のリニアトラッキングアームを見ること、触ること、聴くことができる。
そうやって気がついたことがいくつかある。
そうやってリニアトラッキングアームの現場が抱えている問題点にも気がつくことになる。

つまりリニアトラッキングアームは、ほんとうにトーンアームの理想なのか、ということに疑問をもつようになる。
そんなときと重なるように、ラジオ技術で回転ヘッドシェルの記事が載った。

1980年代半ばごろだった。
三浦軍志氏の記事だった。

三浦氏はQUADの管球式コントロールアンプ、22の記事をよく書かれていた。
TQWT(Tapered Quarter Wave Tube)形式のスピーカーの記事も書かれていた。

22の記事もTQWTの記事もよく読んでいた。
その三浦氏が回転ヘッドシェルなるものをラジオ技術で発表された。

とはいえ最初の記事で、回転ヘッドシェルのもつ可能性に気づいていたわけではなかった。
ただ、回転ヘッドシェルがうまく動作するであれば、
リニアトラッキングアームにこだわる必要がなくなることは気づいてはいた。

Date: 8月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RS-A1のこと・その1)

つい先ほどラジオ技術のウェヴサイトを見ていた。
いつもは次号の表紙を確認するくらいなのだが、たまには下までスクロールしてみた。

毎月12日似発売になる号の紹介の下には、
書籍の紹介があり、真空管アンプのキットの紹介が続く。
そして、また書籍の紹介があり、いちばん下までスクロールすると、
1996年ごろから発売しているトーンアームのRS-A1の写真がある。

今日現在、RS-A1の写真と簡単な紹介文は残っているものの、
「生産終了しました」と赤字である。

製造中止になったのか、
いつなったのだろうか、
ときどきラジオ技術のサイトにはアクセスするものの、いちばん下までスクロールしたのは、
前回はいつだったのか思い出せない。

つまりRS-A1がつい最近製造中止になったのか、それとも一年前だったのか、
もっと前だったのか、は、だからわからない。
たぶん、けっこう前なのではないのだろうか。

ただ、このトーンアーム、あまり注目されずに消えてしまったのか、と残念におもっている。

RS-A1は写真を見てもらえればわかるように、アマチュアの手づくりのような雰囲気をもっている。
価格は当時65000円だった。
1990年後半には、高価なトーンアームもいくつか登場したいたのだから、
65000円という価格は、それだけで注目を集めることが難しかったのかもしれない。

RS-A1が10倍の値付けで、海外のメーカー製ということだったら、
注目度も大きく違っていたことだろう。
でも、RS-A1はラジオ技術のブランド、RSラボの製品ということが、
このトーンアームの存在をマイナーにしていたようにも思う。