Date: 11月 7th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その9)

今回は会場にいた時間はそれほどながくはなかったので、
聴きたいブースの音のためには、時間に余裕がある時ならば、
あまり関心の持てない人の話をきかずにすむのだが、今回はそうはいかなかった。

そのブースを音を聴くには、オーディオ評論家と呼ばれている人の時間帯にあたってしまった。
それでも、どういう話を、どういう話し方でする人なのだろう、という関心はあった。

話が始まった。
五分もきいていたら、いいかげん音を聴かせて欲しい、と思っていた。
でも話は続く。
しびれがきれる寸前で、やっと音を鳴らすことになったのだが、
ここでもまた少し話があって、それこそ、やっと音が鳴った。

一曲終り、また話が始まる。
そして二曲目、話、三曲目……。

話と音楽が交互にくるのは、どの人でも同じである。
同じであるからこそ、話の内容、かける音楽の違いが、より鮮明になってくる。

今回のショウで最終日の最後にステラのブースで柳沢功力氏によるテクダスのAir Force Oneをきいていた。
きいていて、上に書いた人とは正反対で、こちらがしびれをきらすようなことはほとんどなかった。
話もきいていて面白い。
話の内容すべてに同意できるわけではないし、疑問があるところもないわけではないけれど、
それでも、柳沢氏の話をきいていて感じていたことは、
話の巧拙ではなく、ああ、この人はプライベートでは、こういうオーディオの楽しみ方をしているんだ、
そういうことが話をきいて想像できるから、おもしろかったし、退屈することがなかった。

そこで感じられた楽しみ方が、自分の楽しみ方と完全に一致する必要はない。
とにかく、その人がどういう楽しみ方、オーディオと音楽との接し方をしているのかが、
きちんと伝わってくれば、話をしている人と私とのあいだに、いろいろな違いがあっても、
そんなことは問題にはならない。

上に書いた人の場合、私にはその人のオーディオの楽しみ方が伝わってこなかった。
話をきいていて、この人は、オーディオで音楽を聴くことを楽しんでいるのだろうか……、とさえ思っていた。

Date: 11月 6th, 2013
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生に必要なこと

[残心]
①不満や未練が残ること。未練。
②武道における心構え。一つの動作が終わってもなお緊張を解かないこと。剣道では打ち込んだあとの相手の反撃にそなえる心の構え、弓道では矢を射たあとその到達点を見極める心の構えをいう。

辞書(大辞林)には、残心について、こう書いてある。

アナログディスク再生に必要なことはいくつもある。
それらひとつひとつをここでは書かない。

オーディオ機器は音楽が鳴っている時、
つまりオーディオ機器が本来の動作をしているときには、聴き手の手からはなれている。
アナログディスクをかけるときもそうだ。

アナログディスクの上に針先を注意深く降ろしたら、
あとはボリュウムを上げるだけ、である。

だからこそ、この残心が求められる、と私は思っている。
ここでの残心は①の意味ではなく、②の意味であり、
その②の意味でも弓道の矢を射たあとの心構えが、
アナログディスクでの残心に近い。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクならではの音(その2)

スピーカーシステムとアナログプレーヤーは同一空間に置かれる。
このことがアナログディスクならではの音と深く関係しているのではないか。

少なくとも私は、音響的・振動的に完全に隔離された別々の部屋に、
それぞれスピーカーシステムとアナログプレーヤーを設置した音は聴いたことがない。
このときの音が、同一空間にスピーカーシステムとアナログプレーヤーを設置した音と共通する、
もしくは同じといえる音であるならば、このことは見当外れということになる。

少なくとも同一空間にスピーカーシステムとアナログプレーヤーがあった場合、
スピーカーシステムから空気を伝わってくる音という振動、
床や壁を伝わってくる振動が、アナログプレーヤーを揺さぶっている。

音が空気中を伝わる速度は約340m/secであるから、
スピーカーシステムとアナログプレーヤーとの距離が3.4mならば、
カートリッジが音溝をトレースして、その信号がスピーカーから出てから1/100秒後にはカートリッジを含めて、
アナログプレーヤー全体を揺さぶっている。

それとは別にスピーカーシステムが空気中に浮んでいないかぎり、
スピーカーユニットからの振動はエンクロージュアを伝わり、床を動かす。床からの振動は壁にも伝わる。
空気中を伝わる速度よりも、固体を伝わる速度のほうが速いから、
床を伝わってくる振動は音として伝わってくる振動よりも速くアナログプレーヤーを揺さぶっている。

これらは、いわゆる振動のフィードバックである。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクならではの音(その1)

世の中にはいろいろな方式がある。
入力機器となるアナログプレーヤー、CDプレーヤー、チューナー、テープデッキなど、
それぞれの方式の中で機器による音の違いがあるから、
たとえばアナログディスクならではの音、テープ特有の音ということを、
他の要素から切り離してどれだけ正確に認識できるかというと、あやしいところではなる。

けれどもオーディオも長年やっていて、それぞれの方式の、さまざまな音を聴いていると、
なんとなくではあっても、やはり方式固有の音が存在する、という感じが濃くなってくる。

アナログディスクにも、アナログディスク固有、アナログディスクならではの音がある。
それはテープからは出てこない音だし、CDから聴くことはできない。
その逆もまたいえることである。

もうこれは感覚論であって、技術的な裏付けはほんとうにてきるのだろうか、と思う。
それぞれの方式に固有の音があるのならば、それはその技術と密接に関係しての結果であり、
その技術とは科学の裏付けがあってのものだから、本来ならば技術的に説明できることのはず──、
そうなのだろうが、そういうことはメーカーの技術者、研究者におまかせしよう。

われわれ聴き手は、感覚的であっていい。
感覚的であることが嫌な人は、徹底的に究明するか、方式固有の音なんて存在しない、と否定すればいい。

アナログディスクならではの音は、いったいどういうことが関係しているのであろうか。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: 3D Printing

アナログディスクと3D Printing(その4)

DMMのように工程を省略するのであれば、
3D Printingによってスタンパーをつくり出す、ということも考えられる。
そうすればアナログディスクの量産にも問題はない。

だが私はおもうに、アナログディスクの音の魅力というのは、
やはりカッティングヘッドによって、
電気信号が機械的振動に変換されて溝が刻まれていくことにある、と。

これになんの根拠もない。
しかもラッカー盤というやわらかいものをカッティングするのと、
銅円盤という、金属としてはやわらかい銅とはいえ、ラッカーに比べれば硬い。
そういう硬いものをカッティングするのとでは、音に違いが出て当然である。

工程が省けるかどうかによる音の違いもあるから、
通常のスタンパーの製造過程とDMMによる製造過程の音の違いは論じにくい、ともいえる。

私がいま夢想しているのは、
これまで通りラッカー盤をカッティングする。
そのラッカーマスターを光学的にスキャンして得られたデータを、
3D Printingによってスタンパーとして出力する、ということだ。

これはもう夢物語ではない。
現実につくりあげる技術は揃っている。
あとは、それらの技術をどう構築していくか、である。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: 3D Printing

アナログディスクと3D Printing(その3)

メタルマザーができた時点で検聴が行われる。
それまでの工程でミスがなかったどうかの確認のためである。

異常がなければメタルマザーにニッケルメッキを施しスタンパーをつくる。
これがアナログディスクのプレスにつかわれるスタンパーとなり、
ひとつのメタルマザーから複数枚のスタンパーがつくられる。

これがスタンパー工程である。

メタルマスターもスタンパーとして使用できるのだが、
メタルマスターをスタンパーとして使ってしまうと、
一枚のラッカーマスターから一枚のメタルマスターしかつくれないわけで、
つまりは一枚のラッカーマスターからは一枚のスタンパーしからつくれないことになり、
量産向きとはいえなくなる。

だからマザー工程を経てスタンパーをつくる。

ラッカーマスター、メタルマスター、メタルマザー、スタンパーというふうにつくられていくわけで、
ラッカーマスターの溝を忠実に反転したスタンパーをつくろうとしているわけだが、
これだけの工程を経ていると、どれだけラッカーマスターに忠実なのかは正直なんともいえない。

ならば少しでも工程を省いてしまえば、ずっとラッカーマスターの溝に忠実になるはず。
そういう発想から誕生したのが、テルデックが1982年ごろに開発したDMM(Direct Metal Mastering)である。

DMMは銅円盤に、高周波バイアスをあたえて直接カッティングする。
それによりメタルマザーがカッティング工程だけでできあがる。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: 3D Printing

アナログディスクと3D Printing(その2)

スタンパーとはラッカー盤に刻まれた溝をそのまま反転して突出したものである。
アナログディスクに刻まれている溝を音溝というならば、スタンパーのは音山とでもいおうか。

しかもプレスに使うものだからスタンパーは硬いものでなければならない。
そのスタンパーをカッティングしたラッカー盤(ラッカーマスター)から直接つくれればそれにこしたことはない。

けれどそうもいかなくて、まずラッカーマスターの表面にごく薄い硝酸銀の膜を吹きつける。
こうすることで電気の不良導体であるラッカーマスターが電導体となる。
この処理のことを、銀鏡処理という。
つまりメッキするための下準備である。

銀鏡処理がすんだラッカーマスターにニッケルメッキを行う。
始めは電流を少なくして、ある程度ニッケル層ができ上がってきてからは電流を増していき、
ニッケル層を十分な厚みまで増していき、ラッカーマスターから剥離する。
これで厚さ約0.3mmのニッケル盤ができ上がる。

このニッケル盤のことをメタルマスターと呼び、
ここまでの工程がマスター工程となる。

ラッカーマスターからメタルマスターを剥離する時に、
ラッカーマスターに吹きつけた銀はメタルマスター(ニッケル)側にすべてついてくる。

つまりラッカーマスターの音溝をもっとも忠実に転写しているのは、この銀の部分ということになる。
この銀膜は厚さ約0.08ミクロンから0.1ミクロンほどの薄さだ。

このメタルマスターにさらにニッケルメッキを施す。
それを剥離したものがメタルマザーと呼ばれるもので、
ラッカーマスターから転写を二回行っているから、メタルマザーはラッカーマスターと同じ溝のディスクであり、
もちろん、このメタルマザーはラッカーマスターと同じように再生することができる。

とはいえメタルマザーなので(材質の違いにより)、ラッカーマスターとは異る音だという。
しかもニッケルは磁性体なので、マグネットが強力なMC型カートリッジは引きつけられるため、
メタルマザーの検聴には向かない。

メタルマスターからメタルマザーをつくる過程を、マザー工程と呼ぶ。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: 3D Printing

アナログディスクと3D Printing(その1)

3Dプリンターでアナログディスクを出力する──、
こんなことを試した人がいることを約一年前に紹介している。
Digital Integration(デジタル/アナログ変換・その2)をお読みいただきたい。

こういう発想は思いつかなかった。
アナログディスクの製造方法として少量生産ならばおもしろいだろうが、
あるまとまった数になると効率がいいとはいえない。
やはり、従来と同じようにプレスしていくのが効率的である。

プレスしていくためにはスタンパーが必要になり、
そのスタンパーをつくる工程としては、まずカッティングがある。

カッティングマシンによりラッカー盤への切削である。

ラッカー盤とは平坦なアルミ盤(厚さ約0.95mm)の両面に、
硝化綿(ニトロセルロース、別名ラッカー)をコーティングしたもの。
ラッカーのコーティング層の厚みは約0.185mm。

ラッカー盤の製造会社は、アナログディスク全盛時代には海外に三社あった。
ラッカー盤以前はロウ盤が使われていた。

ロウ盤でもレコードの製作は可能なのだが、
テストカッティングしたロウ盤は再生することができなかった。
ラッカー盤は基本的に一回の再生には耐えられる。
もちろん一度再生したラッカー盤はそのまま廃棄される。

カッティングされたラッカー盤はいわばアナログディスクの原型でもある。
これをベースにしてスタンパーがつくられるわけなのだが、
その過程はいくつかの工程にわけられる。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(LINN EXAKT)

インターナショナルオーディオショウに最終日にも行ってきたのは、
VOXATIVのAmpeggio Signatureをもう一度聴きたかったのがまず第一にあり、
初日に聴き忘れていたLINNの新システムEXAKT(イグザクト)を聴いておきたかったのも理由のひとつである。

EXKATの詳細についてはLINNのサイトを参照していただくとして、
この新システムを構成するコンポーネントは一組のスピーカーシステムKLIMAX EXAKT 350と、
入力機器にあたるEXAKT DSMだけである。
コントロールアンプもパワーアンプも要らない。

パワーアンプはスピーカーエンクロージュア内にフローティングされて搭載されている。
実にシンプルな構成のシステムである。
実際にはハードディスクも必要となるが、
EXKAT DSMを含めてこれらは目につかないところに隠して置くこともできる。

そうなると聴き手の視覚にはいってくるのはスピーカーシステムのKLIMAX EXAKT 350だけとなる。
他の仕上げがあるのかどうかは知らないが、LINNのブースにあったKLIMAX EXAKT 350は黒仕上げだった。
存在を目立たせないように黒を選んだようにも思えた。

LINNはシステムを消し去りたいのかもしれない──、
そんなことも思ってしまった。

LINNのEXAKTシステムで聴き手が操作のために触れるのは、
専用アプリをインストールしたiPadになる。
そうなると専用アプリのインターフェースのデザインこそが、
EXAKTシステムのデザインの中心となるのだろうか。

この項を書き進めていくにあたり、
このことを踏まえて考え直さなければならないかもしれない──、
そんなことを考えていた。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: ショウ雑感
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2013年ショウ雑感(行けば楽しい・その2)

国際フォーラムに搬入するということは、その前に各メーカー、輸入商社は自社からの搬出作業がある。
その搬出作業の前には機材のチェックがあるはずだし、梱包作業がある。
そうやって搬出し、会場に搬入し、開梱して設置する。
場合によっては、梱包資材はブースに置ければいいけれど、そうもいかなければ持って帰ることにもなる。
搬出作業はこの逆を行う。

実際にやってみると、たいへんなことである。
しかも今週末(8、9、10日)は大阪でまたオーディオショウがある。
ほとんどの会社が前日には大阪入りすることだろうから、
インターナショナルオーディオショウとハイエンドオーディオショウの両方に出展する会社は、
例年よりも大変であろう。

いま東京で開催されるオーディオ関係のショウはほとんどが無料である。
インターナショナルオーディオショウもハイエンドオーディオショウも入場するのにお金は要らない。
もっとも会場で欲しい、と思ったモノを手に入れるには、かなりの金額を必要とするけれども。

けれど会場を借りるのにはお金が必要となる。
搬入搬出作業にもお金はかかる。
お金はそれ以外にも出ていく……。

そういうオーディオショウが無料で入場できるわけだ。
なのに、人が多いとか、まともな音なんか聴けないから、とか、
電車に乗るのが面倒だから、とか、家族サービスをしなければならない、とか、
行かない理由なんて、いくらでもつけようと思えばつけられる。
そうやって行かない人は、もしオーディオショウが開催されなくなったら、
なんというだろうか。

毎年開催してくれている、とおもっている。
それも営業活動だろう、といえばそうである。
けれど、直接的な営業活動ではない。
あくまでも間接的な営業活動でしかない。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(行けば楽しい・その1)

今年のインターナショナルオーディオショウには初日と最終日に行った。
行くまでは、人が多いんだろうな……、そんなことを思っている。
でも会場に着き、それぞれのブースを廻っていると、やはり楽しい。

音なんて、ブースに入って瞬間にわかる、
だから一分もいないよ、
──こんなことを堂々と語る人を知っている。
インターネットにも同じようなことを書いている人もいる。
同じ人なのかどうかはわからないけれど、
こんなことを言って、何が楽しんだろう……、と思う。

自分の耳の良さでも自慢したいのだろうか。
そうやって自慢しなければならないほどの耳なのか。

どのブースにしても100%の状態で鳴っているわけではない。
そんなことは、このインターナショナルオーディオショウに何度か来ている人ならばみなわかっている。

だから聴く価値がない、という人もいる。
ほんとうにそう思っているのだろうか。

いくつか注文をつけたくなるところは私も持っている。
それでも、行けば楽しい。

おそらくショウ初日の前日の夜に、
各ブースの人たちは搬入作業をやっているはず。
エレベーターの数は限りがあるから順番を守っての搬入になるはずだ。

インターナショナルオーディオショウで使うブースはほとんどが会議室としてつくられているわけだから、
展示場として設計されている施設よりも搬入条件はよくない、と思う。

そうやって搬入してオーディオ機器の設置、それにブースの設置などの作業。
それから音を出しての調整。

初日の朝も、調整しているところもある、と思う。
実際に数年前、ショウの二日目の朝、あるブースで調整の最中だった場に遭遇している。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: audio wednesday

第34回audio sharing例会のお知らせ(瀬川冬樹氏のこと・再々再掲)

今月のaudio sharing例会は今週の水曜日(6日)である。
翌7日は、瀬川先生の命日であり、三十三回忌となる。

だから、前日6日のaudio sharing例会では、
私が所有している瀬川先生の未発表原稿(未完原稿)、
デザインのスケッチ画、かなり若いころに書かれたある記事のプロットといえるメモ、
瀬川先生が考えられていたオーディオ雑誌の、いわば企画書ともいえるメモ、
その他のメモなどを持っていく。

これらはいずれきちんとスキャンして公開していくつもりだが、
原稿、メモ、スケッチそのものを公開するのは、この日(11月6日)だけである。
今後一般公開しない。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その8)

デモンストレーションとは、辞書(大辞林)には、
勢力・技能・性能などをことさらに示すこと。また、そのための行動や実演、とある。

勢力・技能・性能などを示すことがデモンストレーションであるのなら、
音出しをデモンストレーションと呼ぶことに抵抗はないのだが、
「ことさらに」とあるから、デモンストレーションは使いたくないし、抵抗を感じる。

ことさらとは、際立つように意図的に物事を行うさま。故意に、わざと、と辞書にはある。

オーディオフェアのような会場では、「ことさらに」も必要となってきたかもしれないが、
インターナショナルオーディオショウでは「ことさらに」は必要ではない。
だからデモンストレーションではない。

ならば、講演なのか。

講演とは、聴衆の前で、ある題目のもとに話をすること。また、その話であるから、
インターナショナルオーディオショウでオーディオ評論家と呼ばれている人がそれぞれのブースで、
そこで取り扱っているオーディオ機器について話すことは、講演の範疇に、言葉の意味としては入る。

講演と呼ぶことを理解はできても、それでも納得がいかない。
講演と呼んでいいのか、というおもいがどうしても残る。

講演の講の文字が頭につく言葉には、講解、講学、講義、講座、講師、講釈、講読、講評、講明、講論などがある。
講演を含めて、これらから受ける印象が、
どうしてもインターナショナルオーディオショウのブースでやられていることとはあわない。

何もすべての、それぞれのブースでやられていることが講演と呼べないとは私だって思っていない。
講演だ、と思える場合も確かにある。
でも、残念なことにそれはわずかである。

インターナショナルオーディオショウで行われている、いわゆる講演のすべてをきくことはできない。
体はひとつしかないから。
でも、関心があまり持てない人でも、一度は、そのブースに行ってきいてはいる。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その3)

ステラのブースで鳴っていたスピーカーもアンプも、それにAir Force Oneも、
私にとっては初めて聴くモノばかりであった。
そういうシステムで、しかも比較対象がない状況でどれだけ正確に音を判断できるのか。
そのことに疑問を持たれるかもしれない。

アナログプレーヤーを、聴きなれているモノと比較できれば、
より正確にAir Force Oneの実力・素姓は掴める。

今日の音出しは、何ひとつ変えることなく、二時間Air Force Oneによるアナログディスクの再生だった。
同じディスクのCDが再生されることもなかった。

それでもアナログディスクにはスクラッチノイズが、宿命的につきまとう。
そしてこのスクラッチノイズが、こういうなにもかもが聴くのが初めてのシステムであっても、
確かな基準となってくれる。

別のブースでのことだが、ここでもアナログディスクがかけられていた。
高価なカートリッジ、高価なトーンアーム、高価なターンテーブル、
トータル金額はAir Force Oneには及ばないものの、かなり高価なシステムである。
このシステムも、初めて聴くモノばかりで構成されていた。

このプレーヤーでのスクラッチノイズは出方は、
私が良しとするアナログプレーヤーでので方とは異質の出方だった。
ノイズの量としては多くはないけれど、やけに耳につく。
なぜ、そういうノイズになってしまうのか、
そのアナログプレーヤーを自分の手で調整してみて音を聴いてみないとはっきりとしたことは何も言えないが、
ただ単に調整がおかしいだけとは思えない、そんなノイズの出方・質(たち)であった。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その2)

朝からの用事が予想以上にはやく片づいたので、今日もインターナショナルオーディオショウに行ってきた。
会場に着いたのが13時ごろ。

まずアークのブースに行き、VOXATIVが鳴らされる時間をチェックして、
それまでの間リンのブースに行っていた。
それからアークのブースに15時までいて、
ふと前を通りかかったステラのブースに入ったら、
ちょうど柳沢功力氏によるテクダスのAir Force Oneの音出しが始まるところだった。

一昨年展示してあったAir Force One、
この時は音は聴けなかった。
去年はインターナショナルオーディオショウに行けなかった。
なのでやっと今年、その音を聴くことができた。

最初にかけられたディスクは、柳沢氏ということから、すぐに、あれか、と思われる方も少なくないと思う、
ローズマリー・クルーニーだった。
このローズマリー・クルーニーのディスクは所有していないけれど、
何度か聴いたことのあるディスクである。

ローズマリー・クルーニーのディスクの上にカートリッジの針先が降ろされ、
音が鳴り出すまでのわずかの間、ここから、おっと思わせる。
音が鳴る。
見事だ、と素直に思える音が鳴ってきた。

アナログディスク再生に関しては、これまでいくつかの印象に強く残る出合いがある。
トーレンスのReferenceを初めて聴いたときのこと、
EMT・927Dstを聴いた時、
トーレンス101 Limitedを手に入れての、はじめての音出し。
その101 LimitedにノイマンのDStとDST62を取り付けて鳴らした音、
マイクロのSX8000IIをステレオサウンドの試聴室で初めて聴いた時、
そしてそのSX8000IIにSMEのSeries Vを取り付けて聴いた時、などである。

テクダスのAir Force Oneの音も、そうなる。
特にSeries Vを聴いた時、アナログディスクでもここまで鳴るのか、と、
アナログディスクの仕組み上のあきらめなければならないと思っていたことを、
Series Vは見事に克服していた。

そのSeries Vに感じた、同じことをAir Force Oneにも感じていた。