アナログディスクと3D Printing(その2)
スタンパーとはラッカー盤に刻まれた溝をそのまま反転して突出したものである。
アナログディスクに刻まれている溝を音溝というならば、スタンパーのは音山とでもいおうか。
しかもプレスに使うものだからスタンパーは硬いものでなければならない。
そのスタンパーをカッティングしたラッカー盤(ラッカーマスター)から直接つくれればそれにこしたことはない。
けれどそうもいかなくて、まずラッカーマスターの表面にごく薄い硝酸銀の膜を吹きつける。
こうすることで電気の不良導体であるラッカーマスターが電導体となる。
この処理のことを、銀鏡処理という。
つまりメッキするための下準備である。
銀鏡処理がすんだラッカーマスターにニッケルメッキを行う。
始めは電流を少なくして、ある程度ニッケル層ができ上がってきてからは電流を増していき、
ニッケル層を十分な厚みまで増していき、ラッカーマスターから剥離する。
これで厚さ約0.3mmのニッケル盤ができ上がる。
このニッケル盤のことをメタルマスターと呼び、
ここまでの工程がマスター工程となる。
ラッカーマスターからメタルマスターを剥離する時に、
ラッカーマスターに吹きつけた銀はメタルマスター(ニッケル)側にすべてついてくる。
つまりラッカーマスターの音溝をもっとも忠実に転写しているのは、この銀の部分ということになる。
この銀膜は厚さ約0.08ミクロンから0.1ミクロンほどの薄さだ。
このメタルマスターにさらにニッケルメッキを施す。
それを剥離したものがメタルマザーと呼ばれるもので、
ラッカーマスターから転写を二回行っているから、メタルマザーはラッカーマスターと同じ溝のディスクであり、
もちろん、このメタルマザーはラッカーマスターと同じように再生することができる。
とはいえメタルマザーなので(材質の違いにより)、ラッカーマスターとは異る音だという。
しかもニッケルは磁性体なので、マグネットが強力なMC型カートリッジは引きつけられるため、
メタルマザーの検聴には向かない。
メタルマスターからメタルマザーをつくる過程を、マザー工程と呼ぶ。