2013年ショウ雑感(その9)
今回は会場にいた時間はそれほどながくはなかったので、
聴きたいブースの音のためには、時間に余裕がある時ならば、
あまり関心の持てない人の話をきかずにすむのだが、今回はそうはいかなかった。
そのブースを音を聴くには、オーディオ評論家と呼ばれている人の時間帯にあたってしまった。
それでも、どういう話を、どういう話し方でする人なのだろう、という関心はあった。
話が始まった。
五分もきいていたら、いいかげん音を聴かせて欲しい、と思っていた。
でも話は続く。
しびれがきれる寸前で、やっと音を鳴らすことになったのだが、
ここでもまた少し話があって、それこそ、やっと音が鳴った。
一曲終り、また話が始まる。
そして二曲目、話、三曲目……。
話と音楽が交互にくるのは、どの人でも同じである。
同じであるからこそ、話の内容、かける音楽の違いが、より鮮明になってくる。
今回のショウで最終日の最後にステラのブースで柳沢功力氏によるテクダスのAir Force Oneをきいていた。
きいていて、上に書いた人とは正反対で、こちらがしびれをきらすようなことはほとんどなかった。
話もきいていて面白い。
話の内容すべてに同意できるわけではないし、疑問があるところもないわけではないけれど、
それでも、柳沢氏の話をきいていて感じていたことは、
話の巧拙ではなく、ああ、この人はプライベートでは、こういうオーディオの楽しみ方をしているんだ、
そういうことが話をきいて想像できるから、おもしろかったし、退屈することがなかった。
そこで感じられた楽しみ方が、自分の楽しみ方と完全に一致する必要はない。
とにかく、その人がどういう楽しみ方、オーディオと音楽との接し方をしているのかが、
きちんと伝わってくれば、話をしている人と私とのあいだに、いろいろな違いがあっても、
そんなことは問題にはならない。
上に書いた人の場合、私にはその人のオーディオの楽しみ方が伝わってこなかった。
話をきいていて、この人は、オーディオで音楽を聴くことを楽しんでいるのだろうか……、とさえ思っていた。