バーンスタインのベートーヴェン全集(続々・1990年10月14日)
コロムビアに、あれだけの録音を残しているバーンスタインなのに、
モーツァルトのレクィエムだけは残していない。
ドイツ・グラモフォンでの、1988年7月のライヴ録音が、バーンスタインの初録音ということになる。
すこし意外な気もする。
いままでモーツァルトのレクィエムを演奏してなかった、ということはないと思う。
なのに録音は残していない。
1988年7月のコンサートは、愛妻フェリチア没後10年ということによるもの。
それが録音として残され、CDになっている。
1988年7月ということは、バーンスタインは70の誕生日まであと2ヵ月という年齢。
バーンスタインが、このときどう思っていたかは、まったくわからない。
けれど、レクィエムの再録音をすることはない、と思っていたのではなかろうか。
録音して残す、最初で最後のモーツァルトのレクィエムを、
バーンスタインは、そういう演奏をしている。
だから聴き終ると、ついあれこれおもってしまう。
当っていることもあればそうでないこともあるだろう。
でもどれが当っているかなんて、わからない。
それでも、おもう。
おもうことのひとつに、こういうバーンスタインの表現は、いまどう受けとめられているのだろうか、
そして、バーンスタインの演奏をしっかりと鳴らしてくれるスピーカーシステムが、
現代のスピーカーの中に、いったいどれだけあるんだろうか、ということがある。