Date: 10月 15th, 2012
Cate: 日本の音
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日本のオーディオ、日本の音(その16)

電源部の、それほど多くないヒートシンクなのに、
振動対策を施すかどうか、施すにしてもどうやるかによって音は変る、と書くと、
電源こそ重要なんだから変って当然、と指摘してくれる人がいる。

電源が重要なのはわかっている。
CDプレーヤーにしてもアンプにしても、交流電源を整流・平滑し、
それを入力信号に応じて変調して出力信号として負荷に供給しているわけだから、
電源が重要なのは、ずっと以前からわかりきっていることである。

だが、少なくともCDプレーヤーの電源部のヒートシンクから、音(というより音楽)は鳴ってこない。

どんなパワーアンプでもいい(といっても管球式ではなくてヒートシンクをもつソリッドステート型だが)、
出力にダミーロード(8Ωの抵抗)を接続して入力信号(音楽信号)を加えた状態で、
ヒートシンクの近くに耳をもっていくと、ヒートシンクから音楽が聞こえてくるのがわかる。

音楽信号に応じて出力段のトランジスターが振動し、
その振動によって音叉的ヒートシンクが共鳴しての現象である。

ヒートシンクの形状、材質、取付け方法などによって、この鳴り方は変ってくるから、
パワーアンプの数だけヒートシンクから聞こえてくる音楽の鳴り方も、また違ってくる。
音量もとうぜん違ってくる。

井上先生が、出力段トランジスター振動源、ヒートシンクを音叉的に捉えられている、
その理由を実感できる。
ヒートシンクは筐体の一部であるとともに、響体ともいいたくなる。

そういう存在のヒートシンクだから、
この部分をどう考えるかは、井上先生の言葉をもういちど引用しておく。

「アンプの筐体構造はスピーカーのエンクロージュアと同等の楽器的要素をもつことを認識すべきだ」

つまりヒートシンクの鳴きを徹底的に抑えていくのも手法のひとつであるし、
どんなに、あらゆる手段を講じたところで、トランジスターの振動の発生をゼロにはできないし、
ヒートシンクの音叉的性格を完全になくすこともできない。

スピーカー・エンクロージュアをどんなに無共振化しようとしても、
無共振思想はあっても、無共振エンクロージュアはひとつとして世の中には存在しないのと同じでもある。

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