バーンスタインのベートーヴェン全集(その3)
一度だけ、音楽通信編集部に、そのとき、サウンドボーイの編集者だったNさんにつれられて、
夜うかがったことがある。
もう寒くなりはじめた季節だったように思う。
黒田先生をはじめ、編集部のスタッフの方々は、大きなテーブルを囲み、アルコールを飲みながら、
熱っぽく語られていた。音楽を、本のあり方を、真摯に語られていた。
わかるところもあれば、まだすんなりとは、私の未熟さゆえに、のみ込めないこともあった。
それでも、新しい雑誌を創刊することの熱さは、きちんと感じとってきた。
大変なことだろうけど、羨ましくもあった、その熱さであった。
音楽通信・創刊号の目次には、こんなことがさりげなく書かれている。
私たちは
音楽を芸術だ芸術だとはいわない。
音楽を「わからないと言う人をばかにしない
(「わかる」人がエライと思わない)。
結局悪口を言わなければならない人や
物は取り上げない。
ただし敬愛もできず応援もしたくない人や
物の提灯持ちはしない。
公平、正義、不偏不党をうたわない、
着実な私見だけのべる。
音楽のたのしみを、
自分たちの生活と人生から考える。
きっと、音楽通信・編集部の人たちは、このことにもとづくことを話し合われていたのだろう。