バックハウス「最後の演奏会」(その20)
この項で「骨格のある音」、「骨格のしっかりした音」といったことを、
くり返し書いている。
「骨格のある音」、わかりやすそうで、そうでない音の表現である。
私が骨格のしっかりした音と感じても、別の人は、
その音に骨格を感じたり意識することはなかったりする。
それにも関わらず、久しぶりにこの項の続きを書いているのは、
2月5日のaudio wednesdayで鳴らしたウェストレックスの10Aの音は、
まさしく骨格のしっかりした音だったし、
その音を聴きながら、いまから四十年以上前に聴いたノイマンのDSTも、
やはり骨格のしっかりした音だったなぁ、と思いだしていた。
野口晴哉氏所有の10Aは、ヘッドシェル、取付用のアダプターを含めると、
オルトフォンのSPUよりも、かなり重い。
SMEの3012-R Specialではゼロバランスがとれないほどだった。
メインウェイトをめいっぱい後ろに下げても、感覚での針圧は5gを優に超えている。
6g以上はあったはずだ。
そういう状態だから、インサイドフォースキャンセラーも十分にかけられない。
オーバーハングも含めて、かなりの調整不備なところがあっての音出しだったが、
その骨格のしっかりした音は、皆の心を鷲掴みにした。
10Aは、日本で復刻モデルが出ている。
その音がどうなのかは、聴いていないのでなんとも言えないが、
それでもオリジナルの10A同様、骨格のしっかりした音を聴かせてくれるのであれば、
その10Aレプリカモデルを買える買えないは別として、
骨格のある音が、どういう音なのかの、
非常にはっきりした基準となるはず。
10Aは、いずれきちんとして状態で鳴らす。
その時はバックハウスのレコードを鳴らしたい。