2023年をふりかえって(その3)
原本薫子氏とは、ステレオサウンドを辞めてからは、
二度ほど電話で短い時間話したきりで、それからは共通の知人からウワサをきくぐらいだった。
早瀬文雄氏(舘一男氏)は、けっこうながいつきあいだった。
舘さんが、ステレオサウンドに登場したころは、医学部を卒業して国家試験の浪人中だった。
なので自由にできる時間はたっぷりあったためか、かなり頻繁に会っていたし、
ステレオサウンド編集部にも遊びに来られていた。
それに当時、舘さんは久我山、私は西荻窪と、わりと近いところに住んでいた。
舘さんの、東京でのスピーカー遍歴はすべて知っているし、
彼がセレッションのSL600を鳴らしていた音以外はすべて聴いている。
北海道と京都にも聴きに行っている。
北海道ではエラックのCL330、京都ではJBLのDD66000だった。
東京から北海道、それから東京に戻ってきて京都へ。
また東京に戻ってきて、もう一度京都、そして沖縄への引っ越し。
東京だけでも、何箇所で音を聴いただろうか。
そんなつきあいも、舘さんが二度目の京都に行ってからは会うこともなくなっていった。
2020年、コロナ禍のころ、電話があった。ひさしぶりの電話だった。
その後、数回電話で話したり、ショートメールのやりとりをしたくらいで、
互いの近況について話すことはなくなっていた。
そんな感じなので、原本薫子氏と舘さんとでは、
オーディオを通してのつきあいが大きく違う。
だから二人が、別の年に亡くなっていたら、あれこれおもうことはなかっただろう。
けれど、二人とも2023年に亡くなっているから、ついついおもうことがある。