Date: 9月 13th, 2023
Cate: 現代スピーカー
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アクティヴ型スピーカーシステム考(その2)

パワーアンプを搭載したスピーカーシステム、
アクティブ型と分類されるスピーカーシステムは以前からある。

私がオーディオに興味を持ち始めた1976年にも、
数は少なかったけれど、もちろんあった。

当時、中学生だった私の目には、
アクティブ型スピーカーはそれほど魅力的なモノとはうつらなかった。

私だけではなかったはずだ。
いまでもそうだけれども、
オーディオマニアはアンプの選択肢がまったくないアクティヴ型スピーカーに対し、
あまり関心がない、もしくはまったくない、という人がいる。

アンプが選べないことを、大きな制約として受けとめているからだろう。
中学生だった私は、そうだった。

その意識が変化したのは、
ステレオサウンド 46号の特集「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質を探る」だった。

ドイツのK+HのOL10というモデルが登場している。
     *
 ひとランク下のO92を聴いたあとで、O92をたいへん良いスピーカーだと思いながらも二~三感じられた不満が、OL10ではすっかり払拭されて、単なるモニターという域を越えてレコード鑑賞用としても優れたスピーカーだと思った。たとえば冒頭のブラームス(P協)。中~低域の充実した支えの上に、オーケストラのハーモニィの魅力がとても素晴らしい響きで転展開する。内声がしっかりしている上に、音に何ともいえない温かさと艶があって、それが全体をとても魅力的に仕上げて聴かせる。ブラームスのベルリン・フィル、ドヴォルザークNo.8のチェロ・フィル、ラヴェルのコンセルヴァトワル、バッハのザルツブルク……これらのオーケストラの固有のハーモニィと音色と特徴を、それぞれにほどよく鳴らし分ける。この意味では今回聴いた17機種中の白眉といえるかしれない。
 こうして比較してみると、O92で音の艶の不足と感じた部分は、言いかえればプログラムソースの音色をやや強引に一色に塗る傾向があって、音色の微妙さをいまひとつ鳴らし分けなかったのではないかと思える。言いかえると、OL10のほうがプログラムソースに対してしなやかに反応する。ブラームスのクラリネット五重奏や「サイド・バイ・サイド3」や、バルバラの「孤独のスケッチ」のように、いわばアトモスフィアを大切にしたレコード場合に、OL10では、とても暖い雰囲気がかもし出される。アルゲリチのスタインウェイと、八城一夫のベーゼンドルファーが、O92ではそれぞれ特徴を少しばかり一色に塗ってしまうところがあったが、OL10になるとそれぞれ音色が十分とはいえないまでもここまで聴ければ不満はない。とくにロス=アンヘレスのラヴェルで、O92ではその声のなまめかしさが少ないと書いたように、オーケストラの音色まで含めてフランス的というよりもむしろ北ドイツふうの音色で表現するようにさえ感じられたが、OL10になると、音がきらめきはじめ、空間に散りばめられ、それでいて派手やかになりすぎず節度を保っていて、あのキャバスのようなフランスそのものといいたい音とは違うが、それでもフランスのオーケストラの音色は一応聴かせて楽しませる。またバッハのヴァイオリン協奏曲の場合にも、独奏ヴァイオリンの音色の良さはもちろんだが、バックの室内オーケストラとの対比もきわめてバランスがよく、オーケストラがとても自然に展開してディテールがよく聴き分けられる。
 ただ、完全無欠のスピーカーというものはない道理で、ポップス系では、JBLの鳴らすあの聴き手をハッとさせる凄さはこれでは出ない。だがパワーを上げてもO92同様に腰のしっかりして、すべての音を立派に鳴らし分けるところは相当の水準といえる。私がもしいま急に録音をとるはめになったら、このOL10を、信頼のおけるモニターとして選ぶかもしれない。
     *
瀬川先生の、この試聴記を読んでからだった。
この試聴記は、それこそ何度も読み返した。

47号の特集、ベストバイでは、
《ほとんど完璧に近いバランス。3chパワーアンプ内蔵なら高価ではない。》
と、瀬川先生は書かれていた。

完璧なバランスをもつ信頼のおけるモニター、
OL10というモニタースピーカーは、聴いておくべき存在として捉えるようになっていた。

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