Date: 1月 12th, 2023
Cate: ディスク/ブック
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回想の野口晴哉 ─朴歯の下駄(その2)

「回想の野口晴哉 ─朴歯の下駄」がさきほど届いた。
届いたばかりだから、ほとんど読んでいない。

読みはじめたとはいえないのだが、とりあえずひらいてみた。
パッとひらいて、オーディオについてなにか書かれているところに当ったら──、
そんなふうにしてみてみたら、ちょうどそうだった。
     *
 先生が亡くなる年の正月のこと……。
 夜、一人の見知らぬ男の人が訪ねて来た。
「スピーカーを買ってくれないか」ということだった。
 全く不思議なのは、そのスピーカーこそ、ウェスタン・エレクトリック594と、ランシングの先代が作ったという戦前のもの──先生が長い長い間、欲しくて手に入らなかったものだった。
「これで欲しいものが全部揃った。もう何も欲しいものがない」
 そういって、先生は微笑(みしょう)した。
 それは三十年間共に暮らして、一度も見たことのない微笑だった。
     *
野口晴哉氏が、どういう人だったのか。
これ以上ないくらいに伝わってくる。

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