Date: 1月 12th, 2023
Cate: 終のスピーカー
Tags:

エラック 4PI PLUS.2のこと(その4)

ステレオサウンド 51号掲載の「オーディオ巡礼」で、
五味先生はH(原田勲)氏のリスニングルームを訪問されている。
     *
 H氏は、じつはまだ音が不満で、何故なら古い録音のレコードなら良いのだが、多チャンネルで収録した最新録音盤では、高域の輝きに欠けるし、測定データをとってみてもクリプッシュホーンは340ヘルツあたりで10デシベルちかく落ちこんでいる。このためチェロが玲瓏たる音をきかせてくれないので、高域にはリボン・トゥイーターを加え、340ヘルツあたりも何とか工夫したいと言う。このオーディオの道ばかりは際限のない、どうかするとドロ沼におち込む世界だ、それは私も知っているが、特性を追いすぎるとシンセサイザーになるのを危惧して、夫人に「いじらせないように」と言ったわけである。もっとも、私を送ってくれる車中で彼はこう言った。「どれほど優秀なシステムでも、今は、オリジナルにどこかユーザーが手を加えねば、マルチ・チャンネル方式で録音される現在のオーディオサウンドを十全には再生できない。どこにどう手を加えるかがリスナーの勝負どころだろうと思うんです。オリジナルをいじるというのは邪道かもしれないし、本当はたいへんむつかしいことでしょう、しかしうまくそれがなし得たとき、はじめて、その装置は自分のものになったといえるんじゃないですか」そうかも知れない、私もそれは感じていることだが、まあそういうものが完成したら又きかせてもらいましょう、と言った。内心では、家庭で音楽を鑑賞するためのオーディオなら、今の音で十分ではないか、とやっぱり思っていた。
     *
《高域にはリボン・トゥイーターを加え》とある。
どこのリボン・トゥイーターなのかは書かれていないが、
私は、ピラミッドのT1だと思っている。

このころのリボン型トゥイーターは、パイオニア、デッカ、ピラミッドぐらいしかなかった。
だとしたら、ピラミッドのはずだ。

H氏の、このころのスピーカーはヴァイタヴォックスのCN191である。
ヴァイタヴォックスのスピーカーは、終のスピーカーを手に入れたいまでも、
いつかは自分の手で鳴らしてみたい、と思い続けている。

現実には置き場所もないし、復刻されたヴァイタヴォックスはそうとうに高価だし、
導入できるだけの経済的余裕はないけれど、
それでもいつかは、一度は──、というおもいは持ち続けている。

もしヴァイタヴォックスを鳴らせる日がおとずれたら、
私もやっぱりトゥイーターを加えたい。

そうなると過去の製品を含めても、エラックの4PI PLUS.2を選ぶ。
私にとって4PI PLUS.2は、そういう存在のトゥイーターだ。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]