TÁR (Music from and inspired by the motion picture)
映画「TÁR」(邦題は未定、日本公開は2023年予定)は、
架空の人物、リディア・タールが主人公で、ケイト・ブランシェットが演じている。
“TÁR (Music from and inspired by the motion picture)”は、
サウンドトラック盤ということになるが、素直にそう呼べない面もある。
このサウンドトラック盤には、マーラーの交響曲第五番のリハーサル風景がおさめられている。
この五番、このまま最後まで聴きたい、
ぜひ改めて全曲演奏・録音してほしい、とつよく願うほどに、
バーンスタインの再録を聴いた時と同じくらいの昂奮を感じていた。
オーケストラはドレスデン・フィルハーモニーなのだが、
指揮者は誰なのか。
ケイト・ブランシェットその人のようである。
ケイト・ブランシェットは才能ある女優だと思っている。
けれど指揮まで、しかもほんとうに彼女が指揮しての、このマーラーの五番ならば、
なんという才能だろうか、と感嘆するしかない。
短い時間だから、可能だった指揮なのか、それとも最後まで指揮できるのか。
“TÁR (Music from and inspired by the motion picture)”のジャケットは、
アバドによる五番のジャケットを想わせる。