MQAで聴けるエリザベート・シュヴァルツコップ(その3)
エリザベート・シュヴァルツコップ、
それにジョージ・セル、アルフレッド・ブレンデルらによる
モーツァルトの“Ch’io mi scordi di te?… Non temer, amato bene, K. 505”。
これを聴いて、美しいと感じない人と美について語り合うことは無理!
そんなことをついいいたくなるほど、美しい。
私はCDで聴いたのが最初だった。
だからアナログディスクもさがした。
イギリスからオリジナル盤を取り寄せたのは、1989年か1990年だった。
安くはなかったけれど、驚くほど高価だったわけでもない。
そのオリジナル盤も、背に腹はかえられぬ時期に手離してしまった。
もう一度、オリジナル盤を手に入れたいか、というと、
まったくないわけではないが、MQAで聴けるようになったいま、
オリジナル盤で聴くよりも、メリディアンのULTRA DACで聴いてみたい──、
という気持のほうがずっとずっと強い。
メリディアンの218に手を加えて、勝手にWONDER DACと呼んでいる。
そのクォリティには満足しているが、
218とULTRA DACとでは、元々が違いすぎる。
どれだけやっても超えられぬ領域があって、
それはマリア・カラスのCDをULTRA DACで聴いた時に、もっとも強く感じている。
マリア・カラスの肉体の描写において、
CD+ULTRA DACとMQA Studio+218(WONDER DAC)とでは、大人と子供くらい違う。
前者は胸のふるえる感じすら伝わってくる。
肉体の復活において、WONDER DACはULTRA DACに劣る。
価格がULTRA DACの1/20なのだから、製品の規模も大きく違うのだから、
その違いは埋めようがないことはわかっていても、
シュヴァルツコップの“Ch’io mi scordi di te?… Non temer, amato bene, K. 505”、
この美しい曲を聴いていると、そこまで美しいと感じているのに、
そこで踏み止まっているのか、という声が聞こえてきそうな──、そんな気さえする。
マリア・カラスは12月2日、
エリザベート・シュヴァルツコップは12月9日の生れ。
二人とも射手座。
そうだよなぁ……、独りごちる。