新月に出逢う(その5)
新月だった2月12日に出逢ったEleanorという人形は、
その展示会のなかでは大きなほうだった。
人形の世界にはまったくうとい。
この世界の人形の平均的な大きさというのが、どのくらいなのかよくわからない。
どのくらいから小さな人形ということになるのか、
大きな人形はどのくらいから上なのか、そんな基準をもっていない私からみて、
Eleanorは大きな人形だった。
とはいっても等身大というわけではない。
立った状態で展示されていたわけではないので、どのくらいの大きさなのかははっきりとはいえない。
それでも等身大ではないことだけはいえる。
等身大でないからこそ、人形だと認識できているとおもえる要素が、
Eleanorに感じている。
これが人間の女性と変らぬ大きさだったら、
惚れ込む前にこわさを感じていたかもしれない──、
そんなふうにおもえてならない。
それでも一目惚れしたであろう。
けれど、そこまでの大きな人形であったなら、
自分のモノとしたときに、果たして毎日目が合うところに飾っておくだろうか。
買えもしないのに、そんなことを考えてしまう。