Date: 12月 6th, 2020
Cate: 1年の終りに……
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2020年をふりかえって(その7)

ワディアから170 iTransportが登場したころ、あるオーディオ雑誌の編集長が、
「自分が編集長でいるあいだは、絶対にiPodを誌面に登場させない」──、
そう息巻いていた、というウワサをきいたことがある。

そういう人がいるのか、と思ってきいていた。
誰なのかもきいて知っているが、名前を出すこともなかろう。

一人のオーディオマニアとして、
自分のシステムにはiPodは絶対に導入しない、というのは、
その人の拘りとしてあってもいいと思う。
それはご自由に、である。

オーディオ評論家として、絶対にiPodをオーディオ機器としては認めない、も、
その人の拘りとしてあってもいいだろう。

でも、オーディオ雑誌の編集長としては、どうだろうか。
しかも外部にもれるように宣言する、というのもどうだろうか。

オーディオマニアとしての拘りを、オーディオ雑誌の編集長としての拘りとすることは、
読み手へのバイアスなのではないだろうか。

誌面で、iPodはオーディオ機器ではない、と宣言しているわけではないから、
あからさまなバイアスを読み手にかけているわけではない。
けれど宣言していないからこそ、隠れたバイアスともいえる。

拘りそのものが、バイアスである。

2020年は、コロナ禍によって、さまざまな変化が生じてきている。
オーディオの世界もそうであり、
バイアスから解放される方向へと舵を切る人、
バイアスをより深くかける方向へと突き進む人、
そんな流れも出てきているような気がしないでもない。

いまのところはまだはっきりとはいえない。
あと五年、十年経てば、より鮮明な違いとなって現れてくることを期待したい。

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