marantz Model 7K, Model 9K(その1)
ステレオサウンド 49号の巻末に近いページに、
「マランツ♯7K/9Kキットの意味あいをこう考える」という記事が載っていた。
マランツから、Model 7とModel 9のキットが発売になった。
1978年のことだ。
好評だったようで、しばらくしてからModel 8Kも発売になった。
キットといっても、ダイナコやラックスキットとは難易度が違う。
ラックスキットも真空管アンプは初心者にはちょっと無理なモノもあったが、
マランツのこれらのキットはさらに難しい、
おそらくこれまで発売されたオーディオのキットのなかで、最も大変なキットといえる。
高校生だったけれど、欲しい、と思った。
とはいえ手が出ない価格だった。
仮に買えたとしても、きちんと完成させられるかといえば、まず無理だった。
それでも欲しい、と思ったのは、
いいかげんなメインテナンスがなされた中古のマランツを買うよりも、
じっくりと時間をかけて組み立て技術を磨いていけば、
いいコンディションのマランツのModel 7を自分のモノとすることができる──、
そう思ったからだ。
今日、吉祥寺のハードオフをのぞいてみたら、
なんとマランツのこれらのキット、それも未開封のモノがあった。
Model 7K、Model 8BK、Model 9K、
すべて揃っていた。
未開封なので、箱のままの展示である。
四十年ほど保管されていたモノだ。
中がどんな状態なのかは、買った人でなければ確かめられない。
ついていた価格は、ほぼ発売時の価格と同じだった。
お買い得ともいえるし、そうでない可能性もないわけではない。
こんなことをなぜ書いているか、というと、
このマランツのキットは、もしかすると井上先生が所有されていたモノかもしれない──、
そう思えたからだ。
ステレオサウンドにいたころ、何度かマランツの話を井上先生からきいている。
キットのこともきいている。
すべて持っている、と話されていた。
でも買ったままだ、ともきいている。
いつか暇になったら作ろう、と思っている──、
そんなこともきいている。
結局作られなかったのだろう。
そういえば昨年、井上先生所有のオーディオ機器が売りに出された、というウワサを耳にした。
ほんとうかどうかはわからない。
そんなことがあったから、ハードオフにあったマランツのキットを見て、
私がまず思ったのは、そういうことだった。