ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集(その2)
ケント・ナガノ指揮、児玉麻里のピアノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番を聴いたのは、
2008年のことだった。
別項「ベートーヴェン(その3)」で書いていることのくり返しになるが、
「これ、聴いたことあるか?」と言いながら、菅野先生はCDを手渡された。
ケント・ナガノと児玉麻里……、彼らによるベートーヴェン……、と思った。
菅野先生は、熱い口調で「まさしくベートーヴェンなんだよ」と語られた。
菅野先生の言葉を疑うつもりはまったくなかったけど、
それでも素直には信じてはいなかった。
音が鳴ってきた。
「まさしくベートーヴェン」だった。
一楽章が終る。
いつもなら、そこで終る。
けれど、もっと聴いていたい。
そう思っていた。
ほんとうにすばらしい演奏であり、その演奏にふさわしい音だったのだから。
菅野先生も、この時の音には満足されていたのか、
「続けて聴くか」といわれた。
首肯いた。
最後まで聴いた。
このベートーヴェンが、菅野先生のリスニングルームで聴いた最後のディスクである。