ラックのこと(その15)
私がいたころ、ステレオサウンドの試聴室のラックは、
ヤマハのGTR1Bだったことは、何度か書いている。
GTR1Bには棚板が一枚付属していた。
試聴室では棚板を使うことはなかった。
GTR1B一台に、オーディオ機器は一台、という使い方だった。
GTR1Bの天板にアンプなり、CDプレーヤー、アナログプレーヤーを置く。
GTR1Bの中には、何も置かない。
置くとしても、コントロールアンプで電源部が外付けになっている製品では、
その電源部を置くことはあったが、
他のオーディオ機器を収納することはなかった。
収納することはなかったので、GTR1Bはラックというよりも置き台としての存在だった。
しかもGTR1B同士はぴったりつけることは絶対にしなかった。
5mmか1cmくらいは離していた。
理由は音質上の点からである。
試聴室という環境だから、こういう使い方ができる、というか許されるわけで、
家庭でこんな使い方はやりたくても、なかなかできなかったりする。
つまりラックとは、複数のオーディオ機器を収納する機能である。
けれど、その機能を考えてデザインされたラックは、ほとんどないようにみえる。
いま市販されているラックの詳細のすべてを知っているわけではない。
それでも、オーディオショウでよく使われるラックをみて、
ラックとしての機能をきちんとデザインしている、と思える製品はみたことがない。
それぞれに創意工夫が施されているが、
そのラックに収納する複数のオーディオ機器のさまざまな相互干渉を抑える、
そのことに留意していると思えないからだ。