モニタースピーカー論(APM8とAPM6・その13)
ソニー・エスプリのAPM6は、モニタースピーカーとして開発された、といっていいだろう。
けれど、APM6をモニタースピーカーとして導入したスタジオはあっただろうか。
CBSソニーのスタジオには導入されたのだろうか。
QUADのESL63は、家庭用スピーカーとして開発された。
にも関らず、当時のフィリップスがモニタースピーカーとして採用し、
それに応じてESL63 Proが登場した。
ESL63 Proは、型番からわかるように、モニタースピーカーとしてESL63の別ヴォージョンだ。
APM6はモニタースピーカーを目指しながら、採用されることはなかった。
ESL63は家庭用でありながら、モニタースピーカーとして採用されていった。
フィリップスの録音エンジニアは、おそらくAPM6の存在は知らなかったのではないか。
知っていたとして、音を聴いていたのだろうか。
もし彼らがAPM6を聴いていたとしても、
結局はESL63がモニタースピーカーとして選ばれたように思う。
その理由は、(その12)の最後に書いている「漂い」の再現なのだろう。
日本ではモニタースピーカー・イコール・定位の優れたスピーカーというイメージが、
アルテックの604シリーズが、広くモニタースピーカーとして使われていたことからもある。
ESL63をモニタースピーカーとして選んだフィッリプスは、
クラシックの録音を行う部門であるから、「漂い」が、その理由のように思うのだ。