真空管バッファーという附録(その1)
CDプレーヤーが登場してしばらくしたころ、
CDプレーヤーのアナログ出力段は貧弱なものだから、
一般的なライン入力よりも高インピーダンスで受けた方が、好結果が得られる──、
そんなことが一部でいわれるようになり、
実際の製品でもCD入力にバッファーを設け入力インピーダンスを高くしたモノもあった。
さらには高域の周波数特性を1dBか2dBほど下げているアンプも出てきたし、
アマチュアのあいだで流行り出し、メーカーも製品化したモノでは、ライントランスがある。
それらが落ち着いて数年後、ラジオ技術に新忠篤氏が、
おもしろい真空管アンプを発表された。
ウェスターン・エレクトリックの直熱三極管101シリーズを使った単段アンプである。
出力にはトランスがあり、101シリーズの増幅率からすると、
アンプ全体のゲインはあまりない。いわば真空管バッファー的なアンプである。
それ以前にも真空管の音で、CDの音を聴きやすくしようという試みはあった。
けれど新忠篤氏の、この単段アンプはより積極的に真空管、
それもウェスターン・エレクトリックの直熱三極管の持ち味を利用しているところが、
個人的にひじょうにおもしろい、と感じた。
フィラメントの点火方法などいくつか疑問に感じるところはあっても、
全体の構成として、小出力管といえる101シリーズをもってきた点は、
当時の私には思いつかなかったことである。
この新忠篤氏発表の単段アンプのころが、これら手法のひとつのピークだったように、
個人的には感じている。
もっとも個人的関心が強く影響しての、ひとつの感じ方にすぎないのはわかっている。
そんなふうに感じていたから、ラックスからD38uが登場したときは、
まだ続いていたんだ、と驚きと呆れが半分綯交ぜでもあった。
D38uのフロントパネルにはレバースイッチがあり、
これでvacuum tubeとsolid stateが切り替えられる。
vacuum tubeを選択すると、
通常のアナログ出力段のあとに真空管(ECC82)のバッファーが挿入された音を聴くことになる。