Date: 4月 1st, 2018
Cate: High Resolution
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Hi-Resについて(その11)

デジタル録音のサンプリング周波数を高くしていくことの弊害について、
直接的ではないものの、早い時期から指摘されていたのは岡先生である。

ステレオサウンド 58号(1981年)で、こんなことを書かれている。
     *
 デジタル・マスターのレコードがふえるにしたがって、アナログ録音にくらべてものをいうひとがふえてきた。いちばんよくきかれる声は、高域の帯域制限によって生ずる情報量のすくなさ、ということを指摘する声である。音楽再生における情報量の大小をいう場合、その物理量をとっきり測定した、という例はほとんどなく、大体が聴感でこうかわったという表現を情報量という言葉におきかえられている。線材やパーツをかえると音がかわるということがさかんにいわれていたことがあったとき、この問題を好んで論ずるひとの合言葉みたいに情報量がつかわれていた。つまり、帯域の広さと情報量の多さが相関をもち、それがよりハイ・フィデリティであるという表現である。
 しかし、はたして実際にそのとおりかということになると、客観的データはすこぶるあいまいである。むしろ、録音・再生系の帯域を可聴帯域外までひろげることによって生ずる、超高域の近接IMがビートとなって可聴帯域の音にかかわりあうとか、TIMによる信号の欠落、あるいは非直線性の変調歪などが、聴感上情報量がふえるような感覚できこえるのではないかと考えたくなる。
 一昨年、ビクターの音響研究所がおもしろいデータを発表したことがある。プログラムをさまざまな帯域制限を行ったソースを用いて、数多くのブラインドのヒアリング・テストをした場合では、信号系の上限が15kHz以上の変化はほとんど検知されなかったという。音楽再生でハイ・エンドがよくきこえたとか欠落したとかをいう場合、むしろ帯域バランスに起因することが多い。中・低域がのびていると、高域はおとなしくきこえるし、低域が貧弱だと高域が目立つということはだれもが体験しているはずである。性能のよいグラフィック・イコライザーをつかって実験してみると、部分的なバランスを2dBぐらいかえてもがらっと音のイメージがかわることがある。デジタル・システムはアナログ(テープ)にくらべて、低域の利得とリニアリティが断然よく、かつ変調歪によって生ずる高域のキャラクターがより自然であるという点で、聴感上、ハイ・エンドがおとなしくなる、といったことになるのではないかと考えられる。高域の利得が目立っておちていると思えないことは、シンバル、トライアングルなとばの高音打楽器が、アナログより解像力がよく、しかも自然にきこえる例でも明らかである。
     *
CD登場の約一年前に書かれたことだから、
デジタル録音もアナログディスクで再生してのことである。

岡先生もハイサンプリング、ハイビットのデジタル録音・再生の音を、
それもうまくいっているものを聴かれれば、否定されることはないし、
歓迎されるであろう。

それでも安易なハイサンプリング化には、ひとことあったような気がする。

ハイビット、ハイサンプリングは可聴帯域内の音の解像度を向上させることであって、
可聴帯域外の高域再生において、弊害も生じる可能性が高いと心していた方がいい。

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