オーディオの楽しみ方(つくる・その15)
「始めろ」。
そう自分で自分にいうところから、つくることは始まる。
ある人が、彼が心酔しているアンプ製作者の本がつくれたらなぁ……、
そんなことを口にしたのは、二年ほど前のこと。
彼はアンプ製作者と親しい関係である。
ならば、すぐに始めればいいのに……、と私は思う。
そのアンプ製作者も、こんなことをいっては大変失礼にあたるが、
いつまで生きておられるか、誰にもわかりはしない。
まだまだ十年、二十年、元気かもしれないし、
ある日……、ということだってある。
だからアンプ製作者が生きているうちに、本の制作に取りかかるべきである。
そのことを本人に直接伝えている。
けれど、そのままだ。
おそらく、アンプ製作者が亡くなってから、本をつくっておけば……、悔やむことになろう。
その時になってからでも、本はつくれる。
けれどアンプ製作者が生きているうちから始めるのと、
そうでないのとでは、できあがる本は違ってくる。
そのことがわかっているから、何度か彼に言った。
スピーカーの自作とは違うから……、と彼はいうかもしれない。
けれど、どちらもオーディオにおける「つくる」である。
彼がすべきことは、彼自身に「始めろ」といいきかせることだ。
そして、アンプ製作者に「本をつくりたい」と伝えることから、ことは始まる。