スペンドールのBCIIIとアルゲリッチ(その8)
ステレオサウンド 44号の試聴以来、
瀬川先生もBCIIIを高く評価されている。
43号のベストバイではBCIIIに票は入れられてなかった。
47号のベストバイでは、星二つに、
《媚びのない潔癖な品位の高さ。ただし鳴らしこみに多少の熟練を要す。》
と書かれている。
瀬川先生はBCIIには星三つ、
岡先生は反対で、BCIIIが星三つに、BCIIが星二つ。
岡先生も瀬川先生も高く評価されているが、
だからといってまったく同じに評価されているわけではない。
ステレオサウンドがおもしろかったころからの読み手ならば、
岡先生と瀬川先生の音の好みはまったく違っている。
音楽の好みも全く違っている、といってもいい。
岡先生も瀬川先生もそれを承知しながら、互いに理解し合っていた、といえる。
そのことはしばしば、特にスピーカーの評価に、はっきりとあらわれる。
たとえばアコースティックリサーチ(AR)のスピーカーシステム。
岡先生はAR3が日本に入ってきたとき、その第一号を購入されている。
AR3は、その後AR3aになり、LSTへとなっている。
ステレオサウンド 38号に、こんなことを書かれている。
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おかげでおいつはAR屋だと見られているわけだけれど、ぼくはAR−LSTがベストのスピーカーだと思っているわけではない。リスニングルームのスペースやシステムをおける条件その他いろいろなことう睨みあわせ、またいろいろなレコードをきいていて、ぼくのうちではいまのところこのシステムが一ばん安定して鳴っているように自分では思っているだけのことで、充分に満足しているわけではない。
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瀬川先生は、AR嫌い、といってもいい。