Date: 7月 27th, 2017
Cate: 「オーディオ」考
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デコラゆえの陶冶(その9)

デッカ・デコラにはレコードの収納スペースがある。
どれだけの横幅なのか、計ったことはないし、
ステレオサウンド別冊Sound Connoisseurの写真には、寸法までは記載されていない。

百枚くらいだろうか、デコラのレコードの収納スペースにおさまるのは。
このスペースと、この枚数をどう受け取るか。

デコラが登場したころのLPは高価だった。
いまのように何千枚も一万枚をこえるようなコレクションの人は、
まずいなかった(はずだ)。

デコラもひじょうに高価だった。
デッカ・スペシャル・プロダクト部門というのが当時あって、
作られたのは百台だけ、とのこと。

当時デコラを購入できた人は、裕福な人であろう。
それでもデコラのレコードの収納スペースは、百枚くらいのLPしか入らない。

そこにこだわることはナンセンスかもしれない。
デコラのサイズが決っていて、
両側にスピーカーを、中央上部にレコードプレーヤー……、
そんなふうに配置していって、あまったスペースがレコード収納に割り当てられただけ、
そう考えるのは自然だろう。

百枚ほどの収納スペースがあることに、なんらかの意味を見いだそうとするのは、
こじつけ、それとも頭のおかしい人間の考えることかもしれない。
そんなことは他人からいわれなくともわかっている。
それでも百という数字が、デコラについてくる。

その1)で五味先生の文章を引用している。
そこに登場するS氏のレコードの選別のやり方。
そうやんて残しているのは《驚くほど枚数は少なかった。百曲に満たなかった》とある。

クラシックだから百曲に満たなくとも、枚数としては百枚くらいになる。
デコラにうまくおさまる枚数が残っている、
デコラにうまくおさまる枚数を残されている、
──どうしてもそうおもえるのだ。

勝手な想像でしかないのはわかっている、
それでもS氏はデコラでなかったら、残されるレコードの枚数は変ってきたかもしれない。
それ以前に、そういうやり方をされなかったかもしれない。

私は、きっとされなかった、と信じている。
デコラだから、されたのだ、と信じている。

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