80年の隔たり(その7)
アナログ録音、アナログディスクで奏でられるヴァイオリンの音──、
それも真空管採用の録音器で録られたもの、
さらにいえばステレオよりもモノーラル録音のヴァイオリンの音は、
ヴァイオリンという弦楽器が鳴っているというよりも、
たとえば、人が歌っているような感じが印象として加わったような、
もしくは木管楽器の響きに通じるような、情感ただよう感じが増幅されて出てくる面があると思う。
そういう良さを拒否した、ある意味ドライなのかもしれないが、
かといって決して無機質になることのない、別の良さ、魅力が、
優れたデジタル録音のヴァイオリンの音にある。
純粋器楽的な音と言っていいのかもしれない。
もっともデジタル技術の進歩だけでなく、
マイクロフォンが、以前よりも指向性の広いものが使われていることも大きな要素だと思っている。