実写映画を望む気持と再生音(その5)
二つのモダリティが満たされていると、人の認識は本物と錯覚する、ものらしい。
ある人の声をスピーカーから再生しても、その人本人がしゃべっているとは勘違いしないが、
そこにもうひとつのモダリティ、たとえばその人の匂いが加わると、
その人本人がしゃべっていると勘違いする、とのこと。
話している人を実際に知っているという前提が、ここにあるわけだが、
「攻殻機動隊」のハリウッド・実写版「GHOST IN THE SHELL」を観ていて、
ここにスカーレット・ヨハンセンの匂いが加わったら……、と想像していた。
スカーレット・ヨハンセンと会ったことはないから、
匂いが加わったとして、それが本人の匂いかどうかは判断できないし、
それにスクリーンに映し出されているのは、スカーレット・ヨハンセンか演じている少佐であり、
その少佐の匂いは、どう設定されているのか。
MX4Dは匂いもつくようだ。
IMAXで観ながら、MX4Dだとどうなんだろうか。
匂いが加えられているのか──、
と思いつつも、「GHOST IN THE SHELL」の少佐は全身義体(脳だけが本人のものである)。
匂いなど、そこにはないのかもしれない。
そう思わせるシーンもあった。
字幕版を観たから、こんなことを考えたのかもしれない。
吹替え版では、ひとつめのモダリティからして違ってくるわけだから。