資本主義という背景(その2)
CDプレーヤーが1982年に登場してから、そんなに経っていないころから、
CDプレーヤーの市場への投入は早すぎた、という意見が出てきはじめた。
初期のCDプレーヤーの音は、良さもあったけれど、
そういわれてもしかたない面も多分に含んでいた。
早すぎた、という人たちは、
もっとメーカー内で研究を重ねて、その上で出すべきで、
そうすればネガティヴな意見はあまりでなかったであろう、と。
頷きそうになるが、果してそうだろうか。
市場に出たからこそ、CDプレーヤーの急速な進歩があった、と考えるからだ。
メーカーの研究室・試聴室という閉じられた空間(環境)では競争がない。
市場に製品を投入するからこそ、そして資本主義の市場だからこそ競争があり、進歩がある。
市場に投入すれば、さまざまなフィードバックも得られるし、普及もする。
普及することでの恩恵も、メーカーにはある。
だから、私は早すぎた、とはまったく思っていない。
いい時期に登場した、とさえ思っている。
1982年10月だったからこそ、グレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲を、
われわれはCDで聴くことができた。