現代スピーカー考(その19)
KEFの#105で思い出したことがある。
1979年前後、マークレビンソンが、開発予定の機種を発表した記事が
ステレオサウンドの巻末に、2ページ載っていたことがある。
スチューダーのオープンリールデッキA80のエレクトロニクス部分を
すべてマークレビンソン製に入れ換えたML5のほかに、
マランツ10 (B)の設計、セクエラのチューナーの設計で知られるリチャード・セクエラのブランド、
ピラミッドのリボントゥイーターT1をベースに改良したモノや、
JBL 4343に、おもにネットワークに改良を加えたモノのほかに、
KEFの#105をベースにしたモノもあった。
A80、T1(H)、4343といった高級機の中で、価格的には中級の#105が含まれている。
#105だけが浮いている、という見方もあるだろうが、
訝った見方をすれば、むしろ4343が含まれているのは、日本市場を鑑みてのことだろうか。
マークレビンソンからは、これと前後して、HQDシステムを発表している。
QUADのESLのダブルスタックを中心とした、大がかりなシステムだ。
このシステム、そしてマーク・レヴィンソンがチェロを興してから発表したスピーカーの傾向から思うに、
浮いているのは4343かもしれない。
結局、製品化されたのはML5だけで、他のモノは、どこまで開発が進んでいたのかすら、わからない。
なぜマーク・レヴィンソンは、#105に目をつけたのか。
もし完成していたら、どんなふうに変わり、
どれだけマークレビンソンのアンプの音の世界に近づくのか、
いまはもう想像するしかないが、おもしろいスピーカーになっただろうし、
#105の評価も、そうとうに変わってきただろう。