オリジナルとは(愛聴盤とは・その1)
愛聴盤とは、きわめて個人的なモノというより、コトだと思っている。
愛聴盤は、必ずしも世間で名盤といわれているのと同じではない。
あるレコードとであう。
その日から、いまに到るまで、短くない時間、傍らにそのレコードがあり、
決して頻繁にではなくとも、なにかことあるごとに聴いてきたレコードが、
誰にでもあるはずだし、それこそが愛聴盤のはずだ。
私にとっての愛聴盤の一枚は、カスリーン・フェリアーのバッハ/ヘンデルのアリア集だ。
私は、このディスクをCDで知った。
輸入盤だから、”KATHLEEN FERRIER SINGS BACH & HANDEL”で、
ディスク番号は414 623-2である。
輸入されたばかりのころ買った。
1985年のことだ。
まだまだCDの音には未熟なところが残っていた。
それでも、このCDからの音に耳(心)を奪われた。
LPも欲しくなった。もっといい音で聴きたいというおもいがあったからだ。
期待して聴いた。CDの方がフェリアーの声がよかった。
どちらが心にしみてくるかといえば、CDだったのが意外だった。
このことがあった数年後、レコード芸術にイギリスのレコード店の広告が目に留った。
いわゆる初期盤、オリジナル盤を扱うレコード店である。
当時はインターネットはない。郵便でのやりとりだった。
リストが送られてくる。欲しいモノにチェックして返送する。
在庫があれば購入できるし、入金の案内がまた郵便で届く。
入金すれば、しばらくしてレコードが届く。
そうやってLPを買っていた。
ここでフェリアーのLP(初期盤)を探したかというと、しなかった。
初期盤であれば、CDよりもいい音で聴けるであろうとは思いつつも、
このときすでに”KATHLEEN FERRIER SINGS BACH & HANDEL”は、私の愛聴盤になっていたからである。