音の良さとは(好みの音、嫌いな音・その5)
誰だって嫌いな音、苦手な音はできれば聴きたくない。
けれど、ここで考えたいのは、嫌いな音、苦手な音が音の良し悪しとどう関係しているか。
嫌いな音、苦手な音がすべて、いわゆる悪い音であったのならば、
さまざまな手段で、嫌いな音、苦手な音を排除すればいい。
この項の(その1)で書いているかつての同僚のように、
チャーハンに入っているグリンピースを取り除くように……。
チャーハンからグリーンピースを取り除くことは、さほど難しいことではない。
米や具材と融合しているわけではないから、ひとつひとつ取り出せる。
けれど音となると、そうはいかない。
グリーンピースをチャーハンの中から取り除くようには、完全にはできない。
いわば抑える、といったほうがより正確である。
たとえば中高域が強く張り出した音が苦手な男がいたとする。
彼はグラフィックイコライザーを使って、
彼にとって張り出していると思える帯域のレベルをぐっと下げる。
けれど実際には張り出していると感じた帯域は、音圧レベル的に高いというわけではなかった。
別の要因で、張り出したように聴こえることもある。
そういう場合でも、彼はその帯域のレベルを下げる、というよりも、
削ぎ落とすくらいにグラフィックイコライザーを調整する。
そうすることで張り出していた音は、いくぶんか、かなり抑えられることになる。
でも、張り出していると感じさせる要因だけを抑えたわけではない。
同時にグラフィックイコライザーでそこまでレベルを変動させてしまえば、
帯域バランスはくずれてしまう。はっきりとくずれてしまう。