附録について(売れればいいのか)
附録をつければ、それで売上げが伸びるからこそ、
出版社はあれこれ附録をつけた雑誌を出すようになってしまっている。
出版界は厳しい状況にある、とよくいわれる。
そうだと思う。
だから、少しでも売上げが伸びるのであれば……、と思って附録をつける。
ステレオサウンド 197号の附録は、売上げにつながる附録とはいえないと私は思っているが、
私とは反対に、あの卓上カレンダーがついていたから買った、という人もいるであろう。
もしかしたらカレンダーによって、197号の売上げは伸びているのかもしれない。
けれど、読んでいる人はほんとうに増えているのだろうか。
本が売れればいい──、
そうやって附録をつけたりして売上げを伸ばしていく。
会社は利益をあげなければ継続していかないのだから、理解できないわけではない。
けれどそうやって伸びた売上げは、読まれることを増やしていることに必ずしもつながらない。
附録目当ての人は、附録が充実していればそれで満足する。
(その7)に書いたように、
ステレオサウンドを毎号買ってはいるけれど、読んでいない、という人たちは確実にいる。
編集部としては、読まれていないステレオサウンドであっても一冊は一冊であり、
その一冊は毎号買われていくわけで、利益になっているわけだから、それでもいい──、
となるのだろうか。
何で読んだのかは忘れてしまったが、
ドイツ・グラモフォンのプロデューサーが、こんなことをいっていた。
いわゆる売れ筋の曲のカップリングに、マイナーな、あまり知られていない曲を選ぶのは、
あえてやっていることであり、我々(レコード制作者)は聴き手に認知させる、
いわば聴き手を教育するということが求められている──、
そんな趣旨のことを読んだことがある。
売れ筋の曲(録音)に、さらに売上げを伸ばすように、
同じくらい売れ筋の曲(録音)をカップリングすることだってできる。
目先の利益のみにとらわれているのであれば、そのほうがいい。
けれどレコード会社の使命というものがある。
そのことを承知している人たちは、あえてマイナーな曲をカップリングして、
その曲が少しでも世の中に広まっていくようにこころがけている。
出版社としての使命は……、どうなっているのだろうか。