使いこなしのこと(続・認識の違い)
みな、使いこなしは大事だというし、使いこなしに気をつかっている、ともいう。
「何を変えたんですか」といきなりいってきた人も、常日頃そういっていた。
にも関わらず「何を変えたんですか」である。
この「何を変えたんですか」は、
念のため書いておくが、スピーカーの位置、向き、その他の使いこなしに関係することではなく、
システムの一部、もしくはすべて、つまりオーディオ機器を何か買い替えたんですか、という意味である。
「何を変えたんですか」と口にした人を紹介したのは私だった。
彼に悪いことしたな、とも思ったし、そういう人だったのか、とも思っていた。
システムのどこかを買い替えれば音は確実に変る。
良くなるかどうかの保証はないけれど、音は変る。
スピーカーの位置・向きを変えても、音は変る。
買い替えのような派手さはない、地味な作業ではあるが、音は変る。
どちらも使いこなしといえないわけではない。
とことん買い替えずに使いこなしていっても、
いつかは使っているオーディオ機器の限界が感じられてくる時期が来るであろう。
そういうときの買い替えは、使いこなしのうちに含まれる。
だが買い替えが、必ずしも使いこなしといえるわけではない。
そんなことは、オーディオマニアならばみなわかっていることのはずだ。
私が二度三度、同じ人の音を聴きたいと思う理由のひとつは、
その人がどう音と向き合い、使いこなしていくのをみたい(聴きたい)からだ。
スピーカーの力量に対して、明らかにアンプが力不足であるならば、
「アンプを買い替えたので、聴きに来ませんか」と誘われれば、もちろん行く。
けれど力不足とはいえないアンプを持っているにも関わらず、
使いこなしが不十分でスピーカーがうまく鳴っていないのであれば、
その人から聞きたいのは「きちんと調整したので聴きに来ませんか」である。
「アンプを買い替えたから、聴きに来ませんか」ではない。