ポジティヴな前景とネガティヴな後景の狭間で(その1)
タイトルだけを思いついた。
「ポジティヴな前景とネガティヴな後景の狭間で」である。
ポジティヴな前景、ネガティヴな後景は、グレン・グールドの言葉である。
グレン・グールド著作集1(みすず書房)のプロローグから拝借した。
このプロローグは「音楽院卒業生に贈ることば」というタイトルがついていて、
1964年11月、トロント大学王位音楽院でグールドが語ったもの。
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外部を観察することで実体だと思えるものの代わりとしてとか、ポジティヴな行為や知識を補うものとしての想像力ではいけません。想像力がもっとも諸君に役立つのはそういう場合ではないからです。諸君はシステムとドグマ、つまりポジティヴな行為のために教育されてきました。想像力にできることは、これを前景とし、限りない可能性、つまり、ネガティヴの広大な後景を背に、両者にはさまれた一種の無人地帯として役に立つことだけです。
このネガティヴの後景をこそ、諸君は不断に考察し、あらゆる創造的思考が生まれる源泉として、これに敬意をあらわすことをけっして忘れてはなりません。
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50年前のグールドの語ったことを、オーディオにあてはめて考えていきたい。