うつ・し、うつ・す(その4)
鏡に映す、ということで思い出すのは、以前小林悟朗さんが話してくださったことだ。
なぜ、女性にオーディオマニアが極端に少ないのか、という話題だった。
音楽好きの女性は少なくない。
なのにオーディオに凝っている人となると、極端に少なくなってしまう。
小林悟朗さんは、女性は毎日鏡を見る。その時間も男性よりもずっと長い。
つまり小林悟朗さんは、オーディオから鳴ってくる音を鏡として捉えられていて、
オーディオマニアにとって音を良くしていく行為は、
鏡を見て化粧することで、女性が自分自身を美しくしていく行為に近いのではないか。
だとしたら、毎日長い時間鏡の前にいる女性には、もうひとつの鏡であるオーディオは必要としないのではないか。
そんな趣旨のことを話された。
この論でいけば、若い世代にオーディオマニアが少なくなっていることも説明できなくはない。
男性でも若い世代ほど鏡を見ている時間は長い傾向にある。
ならば、そういう男性が増えてくること、一般化してくることは、
男性のオーディオマニアももう増えてくることはないことになる。
完全には同意できないにしても、なるほど、と思っていた。
一理あるかもしれない。
うつ・す、という字をあてはめてオーディオ(録音から再生まで)を捉えてみれば、
小林悟朗さんの話は、なにかのきっかけになる気がしている。