便利であっても(その2)
20代のころはよく行っていた秋葉原も、最近、というよりもこの10年ほどは、めったに行かなくなっていた。
秋葉原という街が変っているからということも関係していないわけでもない。
電子部品を扱う店も以前とくらべると減ってしまっている。
オーディオを扱っている店も減っている。
オーディオは1980年ごろから斜陽産業といわれていたのだから、
秋葉原からオーディオ店が減っていくのは不思議なことでもない。
33年前の春、上京して最初に住んだのは三鷹だった。
渋谷に出かける用があり、隣の駅の吉祥寺まで国鉄で、それから渋谷までは井の頭線を利用した。
初めて乗った井の頭線だったから、窓の外の景色を見入っていた。
すると突然、山水電気という表示のある大きな建物が目に入った。
ここがサンスイなのか、ここにJBLのスピーカーがいっぱいあるのか。
そんなことを思いながら、サンスイの社屋を眺めていた。
それからは井の頭線を利用するたびに、サンスイの近くを通過するときは窓の外を眺めていた。
そのサンスイもいまはない。
建物はいまも残っている。
ヤマト運輸の建物になっている。
秋葉原だけでなく、東京という街からオーディオに関係しているモノが減ってきている。
それでも今日は秋葉原まで行ってきた。
特に、これといった理由はない。
ただ行きたかったから、だ。