夢のなかで……
20代のころからずっと見続けている夢がある。年に数回見ている。
夢の中である場所に行こうとしている。
そこへはいくつかの道がある。けれどどの道を通っても、近くまでは行くことはできても、
その場所(目的地)へは一度もたどり着けなかった。
夢の中での話だが、その場所は、坂の下にある実際にある場所である。
今月の二日未明にも、そこへ行く夢を見ていた。
そこへ降りる階段、
それがなぜか鉄パイプの梯子であり、ひどく華奢で手摺をしっかりと握っても降りるのが困難だった。
なんという階段なんだろう……、と実感したことだけが記憶に残っている。
降りている途中で、なぜか違う場面に変ってしまった。
また今回もたどり着けなかった。
いつものことだから、くやしいとか残念という気持はない。
いつものことだと目が覚めて思っていた。
三日未明にも、そこへ行こうとしている夢をみた。
20代のころから見ている夢だから、もう30年近く見ているけれど、連続してみるのは初めてのことだった。
どの道を通ったのかは、不思議なことに憶えていない。
けれど、いままでそこへたどり着けなかったのがウソのようにすんなり行けた。
ただ着いただけでなく、予期せぬことも夢の中であった。
私が夢の中でずっと行こうとしていた場所とは、14歳のころと関係している。
きわめてプライヴェートなことだから、これ以上は書かないけれど、
ご想像におまかせするし、そういう場所である。
こんな夢をみて、その日なにをおもっていたのかというと、
結局のところ、私という人間は、13、14のころにであったもの・ことから離れずに生きていた、ということだった。
13の秋に「五味オーディオ教室」を読んだ。
14のときに……(想像におまかせします)。
起きているときはオーディオのことばかり、
夢のなかでは、その場所のこと。
13の秋から一年のあいだのことを忘れたくないのだろう、おそらく……。
オーディオをやっているかぎり、その場所のことも忘れない気がする。