賞からの離脱(その28)
ステレオサウンドでは、以前セパレートアンプの別冊を出していた。
1981年夏に出たのを最後に、いまのところは出ていない。
私がステレオサウンドで働き始めたのは1982年1月からだったけれど、
1981年のセパレートアンプの別冊の取材の大変さは聞いていた。
試聴室で行った試聴テストも大変だったわけだが、
それに加えて全アンプの測定は松下電器の協力を得て行っている。
そのためすべてのアンプを大阪まで運んでいる。
これがどのくらい大変なことなのかは、
実際にステレオサウンドで働くようになり、特集の試聴テストの準備をしていくとよくわかる。
特に総テストとつく特集のときは、
試聴そのものは楽しくても、しんどさはけっこうなものがある。
ステレオサウンドは総テストをひとつの売りにしていた。
いまは総テストはほとんど行われていない。
なぜ、こんなことを書いたかというと、
あるとき先輩編集者が話されたことがある。
なぜ、ステレオサウンドがベストバイという特集をやったのかについて、であった。
どうしてか、と思う、ときかれて、
いくつか私なりに考えて答えたけれど、私が考えた理由によるものではなく、
取材(つまり試聴テスト)をやらずにつくれる特集をやることで、
編集者の肉体的な負担を減らそう、体を休ませよう、という意図から企画されたものだ、と聞かされた。
これだけが理由ではないだろうし、どこまで信じていいものか、というところもあるけれど、
ベストバイの特集が最初に行われたステレオサウンド 35号、
このころは総テストが当り前のように行われていた時期である。