チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その2)
ステレオサウンド 43号で、瀬川先生はExclusive F3について、こう書かれている。
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自宅で数ヵ月モニターしたのち、返却して他のチューナーにかえたら、かえってF3の音質の良さを思い知らされて、しばらくFMを聴くのがイヤになったことがある。C3やM4と一脈通じる、繊細で、ややウェットではあるが、汚れのない澄明な品位の高い音質で、やはり高価なだけのことはあると納得させられる。
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これだけでなく、トリオのKT9700のところでも、Exclusive F3については少し触れられている。
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音の傾向は、9300と同系統の、やや硬質で輪郭の鮮明な印象。反面、音のやわらかさやふくらみや豊かさという面では、たとえばパイオニアのF3あたりの方に軍配が上がるが、この辺は好みの問題だ。
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ステレオサウンド 43号はベストバイの特集号で、
KT9700は五人(井上卓也、岡俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹、山中敬三)による選出、
F3はふたり(上杉佳郎、瀬川冬樹)だけである。
KT9700とExclusive F3の音の傾向は正反対であることがわかる。
チューナーとしての性能は、KT9700は150000円と、
Exclusive F3(250000円)よりも安いけれど、
トリオはチューナーを得意としていただけに遜色はないレベル。
それだけに、このふたつのチューターは好対照のように、当時の私は捉えていた。
とにかく瀬川先生の文章によって、F3の音に興味をもった。
43号の一年後の47号でも、
《エクスクルーシヴシリーズに共通のエレガントな音質が独特の魅力。》と書かれている。
51号、55号は筆者別のコメントはなくなり、
どの人がどの機種に点数をいれたのかもわからなくなっている。
それでも55号では、各ジャンルからMy Best3が挙げられている。
瀬川先生にとってのチューナーのMy Best3は、アキュフェーズのT104、ケンウッドのL01T、
それにExclusive F3である。
ここにきて、私のExclusive F3への興味は、やっと強いものになってきた。