598のスピーカーという存在(その14)
例に挙げた1982年当時の598のスピーカー三機種、1987年当時の三機種。
1982年からステレオサウンドで働きはじめた私は、
いずれのスピーカーシステムも持ち運び設置している。
ステレオサウンドの特集の試聴、新製品の試聴、
これら以外の試聴もあるわけだが、とにかく日常的にオーディオ機器を持ち、運び、設置する作業は、
この仕事を経験したことの内人には想像できないほど多い。
スピーカーの試聴で一日に20機種を聴くことがある。
もっと多い場合もあるし、少ないこともあるわけだが、
20機種ということは、スピーカーは必ず二本一組だから40本のスピーカーシステムを運ぶことになる。
運んで設置して聴き終ったら試聴室の隣の倉庫に戻し、次のスピーカーシステムを運び設置する。
これをくり返すわけだ。
腰を痛めることにもなる。
とはいえ、このことは、他ではまず体験できないことだし、
オーディオ機器の重さに対しての感覚も変っていく。
そうやっていくうちに日常的感覚として、
オーディオ機器の重量には、そのバランスを含めて敏感になっていくものだ。
その日常的感覚からもはっきりといえることだが、
1982年の598のスピーカーシステムより、1987年の598のスピーカーシステムは重量が約10kg増すとともに、
重量バランスが悪くなっている(前側に偏っている)。
このことによる音の影響については、(その3)にも書いている。
この他にもスピーカースタンドの、音に対する比重が大きくなり、
スピーカーシステムの値段は同じ59800円でも、
1982年の598のスピーカーシステムと1987年の598のスピーカーシステムとでは、
スピーカースタンドにより丈夫で重量的にもバランスのとれるものを要することになる。
つまり、より高価なスタンドということになる。