Archive for 11月, 2022

Date: 11月 24th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その7)

別項で「オーディオにおけるジャーナリズム(技術用語の乱れ)」を書いている。
そんなこまかいことどうでもいいじゃないか──、そう思っている人もいるだろう。

チョークコイルをチョークトランスと書いたり、
マッキントッシュのパワーアンプの出力に搭載されているオートフォーマーを、
出力トランスと書く人、
それもわざわざオートフォーマー(出力トランス)と書く人もいる。

さらにひどい人になると、整流コンデンサーと書いたりする。
他にも、こんな例はあるけれど、一つひとつ挙げることは、ここではしない。

けれど、こういった技術用語の乱れは、オーディオ機器の理解を妨げることにつながったりする。
無指向性スピーカーも、まさしくそうである。

ビクターのGB1のような多指向性スピーカーを無指向性と表記する。
GB1も無指向性、ジャーマン・フィジックスのスピーカーも無指向性となってしまう。

なんと乱暴な区分けだろうか。
ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは、まさしくシームレスの水平方向の無指向性である。
GB1、同じ構成のスピーカーはそうてはない。

もともと指向性をもつスピーカーユニットを複数個、方向を変えているだけなのだから、
しかもそれぞれのユニットから放射された音は互いに干渉するのだから、
とうていシームレスとは呼べない。

なのに無指向性ということで、ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットも、
そういった多指向性のスピーカーとごっちゃに捉える人が実際にいる。

そして、したり顔で、無指向性スピーカーは──、といったりする。
見当違いのことを、無理解によることをいう。

Date: 11月 23rd, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その6)

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは、
水平方向の無指向性の放射特性をもつ。

そのため、設置が難しい、狭い部屋では無理で広い空間が必要──、
そんなことがいわれがちである。

けれど鳴らしてみると、そんなことはない。
まったくない、と断言できる。

無指向性のスピーカーは設置が難しい、と思われがちなのは、
ジャーマン・フィジックスのDDD型以前の、いわゆる無指向性スピーカーゆえといっていい。

代表的な例はビクターのGB1がある。
GB1は、球体型エンクロージュアに、13cm口径のウーファーを四発、
7cm口径のトゥイーターを七発収めたモノで、類似の製品は他社からも出ていて、
それらも無指向性スピーカーと呼ばれている。

けれどよく考えてみてほしい。
この種のスピーカーは、ほんとうに無指向性なのかどうかを。

菅野先生は以前から、これらのスピーカーは無指向性ではなく、
多指向性というふうに指摘されていた。

無指向性と多指向性。
似ているけれど、まるで別ものであること。
なので多指向性の印象で、真に無指向性のスピーカーを捉えないことが大切となる。

Date: 11月 23rd, 2022
Cate: ジャーナリズム

オーディオの想像力の欠如が生むもの(その82)

オーディオの想像力の欠如した者は、終のスピーカーと出逢えない。

Date: 11月 23rd, 2022
Cate: 映画

Where the Crawdads Sing

昨日、映画「ザリガニの鳴くところ(Where the Crawdads Sing)」を観た。
エンディングのクレジットのところでの歌。

テイラー・スウィフトの歌だとわかる。
テイラー・スウィフトぐらい有名な歌手だと、
クラシックをおもに聴いている私でも、すぐにわかる。

“Carolina”という歌だ。
いい歌だ。

“Carolina”を聴いていたら、パトリシア・ハイスミスの「ふくろうの叫び」を、
「ザリガニの鳴くところ(Where the Crawdads Sing)」の原作者、
ディーリア・オーウェンズは読んだことがあるんじゃないか、そう思った。

「ふくろうの叫び」の主人公は男、
「ザリガニの鳴くところ」の主人公は女。
結末も違う。

それでも世界観に共通するところはある。
“Carolina”は、そのことに気づかせてくれた。

Date: 11月 22nd, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その5)

私がカーボン仕様のDDD型ユニットの音を聴いたのは、
HRS130の音をとおしてである。

なので、直接同じ条件で比較したわけではないので、
どちらがいいとは、いまのところなんともいえない。

それでもサウンドクリエイトで聴いた印象のみでいえば、
スピーカーユニットとしての完成度は高くなっているような感じがする。
リニアリティ(ハイレベル方向)は、あきらかにチタンよりもいい、といえる。

スピーカーとして、忠実な変換機としての性能はカーボンが上か。
そんな気がする。

それでも、私はサウンドクリエイトでHRS130を聴きながら、
あのころ無理してでも(といってもそうとうな無理なのだが)、
Troubadour 40を買っておくべきだった──、そんな後悔に似たおもいをいだいていた。

カーボンかチタンか。
そう訊かれたら、どう答えるか。
カーボンはいいですよ、と答えるだろう。

カーボンがいいですよ、とは答えることはないだろう。

どちらが好きか、と訊かれたら、
チタンだ、と即答する。

Date: 11月 22nd, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その4)

私のところにやって来たTroubadour 40は、チタン仕様。
9月にサウンドクリエイトで聴いたHRS130はカーボン仕様である。

ジャーマン・フィジックスは最初チタンを振動板に採用してきた。
2008年ごろからカーボン振動板も登場した。

カーボン振動板はそう遠くないうちに出てくる、と思っていた。
カーボン繊維はしなやかな素材だし、
その性質からしてベンディングウェーヴ型ユニットにぴったりともいえる。

そのことを当時のタイムロードの人に話したことがある。
返ってきたのは、チタン以外では無理です、だった。

一般的に思われているカーボンのイメージからすると無理という答が返ってきて不思議ではない。
国産のスピーカーシステムの、
おもにウーファーに採用されたカーボンのイメージが強い人はそうかもしれない。

あれは、井上先生がよくいわれたようにカーボンよりもエポキシである。
本来のカーボンを知っていれば、そんな答は返ってこなかったはず。

だからといって、カーボン仕様のTroubadour 40が登場してきたときに、
ほら、やっぱり、とは言わなかった。

そんなことよりも音である。
私は、そのころカーボン仕様のTroubadour 40を聴くことはなかった。
カーボンに期待していただけに、チタンとの比較をやりたかった。

菅野先生はすでに聴かれていた。
どうでしたか、と訊くと、少し渋い表情をされて、やっぱりチタンだよ、といわれた。

そうか、やっぱりチタンか。
カーボンの可能性を信じながらも、2008年の時点ではチタンだったのだろう。

けれどそれから十年以上が経っている。
2008年のカーボンのDDD型ユニットと現在のカーボンのDDD型ユニットが、
まったく同じとは考えにくい。

カーボン繊維自体も違っているのかもしれないし、織り方も変ってきていてもおかしくない。
私は2008年のカーボンと同じとは思っていない。

Date: 11月 21st, 2022
Cate: 老い

老いとオーディオ(終活について)

終活という造語を頻繁に目にしたり耳にしたり、というふうになっていたのは、
いつごろからだろうか。
そんなに経っていないはずなのに、それがあたりまえのことのように思われつつあるようだ。

終活の意味について書く必要はないだろう。
私もあと二ヵ月ほどで60になる。還暦だ。

同世代の人たちは、終活ということを真剣に考え、実行に移しはじめているのだろうか。
終活=断捨離みたいにも受け止められている。

けれどほんとうに終活とは、そういうことなのか。
私はむしろ終活とは、残り時間が少なくなってきたのだから、
好きな分野でいままでやってこれなかったことをやるのが終活だと思っている。

そう思っているからこそ、今年はいくつものオーディオ機器がやって来たのだろう。

Date: 11月 21st, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その3)

菅野先生のリスニングルームでTroubadour 40(80)の音については、
聴いた録音(ディスク)のこと、すべてについて書いていきたいと思いながらも、
ひとつだけ書くとしたら、モノーラル再生の見事なことである。

一度だけモノーラル録音を聴いている。
その時、菅野先生は右チャンネルだけを鳴らされた。
スピーカーシステムもモノーラルにしての再生である。

通常、そういう鳴らし方をすると、音がさびしい感じになりがちなのだが、
まったくそんなことはなかった。

ワイドレンジなモノーラル再生だった。
堂々としたモノーラルの音だった。

別項「MQAのこと、TIDALのこと(MQairのこと・その2)」で、
BOSEのSoundLink Revolve IIを聴いたことを書いている。

この小さなスピーカーもモノーラルで、
しかもTroubadour 40と同じく水平方向の無指向性だ。
シルエットも似てなくもない、といえる。
このことがうまく作用してのモノーラル再生だったのかどうかは、
これから自分のTroubadour 40で確認していける。

Date: 11月 21st, 2022
Cate: 1年の終りに……

2022年をふりかえって(その4)

別項で書いているように、今年はまずGASのTHAEDRAがやって来た。
それからラックスキットのKMQ60(50CA10のプッシュプル)と、
50CA10のシングル自作アンプが夏にやって来た。

そして昨日、終のスピーカー(Troubadour 40と4PI)がやって来た。

けれど、今年やって来たのは、これだけではなく、ここでは何が来たのかはあかさないけれど、
私自身、ちょっと驚くようなモノが来たし、他にもいくつかやって来た。

どうしたんだろう、今年は? 
そういいたくなるほど、オーディオ機器が集まってきている。

そろそろ本気で引っ越しを考えはじめているところだ。

Date: 11月 21st, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その2)

井上先生は、よくいわれていた、
自分の腕の未熟さをスピーカーのせいにするな、と。

ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40に関しては、
Troubadour 80を含めて、菅野先生のリスニングルームで何度もじっくり聴く機会に恵まれた。

ここまでオーディオは達することができるのか──、
そう素直におもえるほどの音を聴いているから、
Troubadour 40(80)の実力の高さはそうとうなレベルだということが、
自分で鳴らす前からわかっている。

このことは、もう絶対にスピーカーのせいにはできない、ということである。
そのくらいTroubadour 40を中心とした菅野先生のシステムの音は、すごかった。

この時の菅野先生の音を聴いた人は、ほとんどが「すごいですね」といったらしい。
けれど菅野先生は、ぽろっと洩らされた。

「みんなすごいといってくれるけれど、
ほんとうにこの音のすごさがわかっているオーディオ業界の人は、
意外にも少ない。○○さんと○○さんくらいだよ……」と。

菅野先生は二人の名前を挙げられた。
誰なのかは書かない。明かすこともしない。

そういうものなのだ、残念なことに。

Date: 11月 20th, 2022
Cate: 同軸型ウーファー

同軸型ウーファー(その7)

その6)で書いているアイディアは実現するのに、けっこうな予算がかかる。
もう少し簡単に同軸型ウーファーの実験が可能になるやり方はないのか。

15インチ口径のウーファーの場合、
ボイスコイル径は4インチ(約10cm)である。
ということはセンターキャップを取り外せば、
露出する磁気回路に小口径ウーファーを接着すれば、簡易的な同軸型ウーファーになる。

小口径ウーファーの磁気回路の径が4インチ以下であれば問題なくつけられるわけだから、
10数cm口径のウーファーまで使える。

10cm口径、12cm口径、16cm口径までウーファーならば実験できる。
もちろん小口径ウーファーにはバックキャビティがないわけだから、
小口径ウーファーの背面の音と前面の音とは干渉するし、
小口径ウーファーの背面の音と大口径ウーファーの前面の音とも干渉する。

けれど小口径ウーファーの背面の音と大口径ウーファーの前面の音とは、
ある程度打ち消しも発生するだろうし、どんな音が鳴ってくれるのかは、
ちょっと想像がつきにくい面もある。

いきなり高価なウーファーでやるのはリスクがあるが、
ほどほどの価格の大口径ウーファーが手に入ったら、まず実験してみたい。

Date: 11月 20th, 2022
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その14)

その13)で、
縁があったから、私のところにやって来た、と私は思っている。

縁をただ坐って待っていたわけではない。
とはいえ積極的に縁をつくろうとしてきたわけではない。

ふり返れば、これらのオーディオが私のところにやって来た縁は、
audio sharingをやってきたから、続けてきたから、そこから生れてきた縁のおかげである。

そう書いている。
今日やって来たTroubadour 40と4PIも、そうだとはっきりといえる。

audio sharingをやってこなかったら、
このブログ、audio identity (designing)をやってなかったら、
Troubadour 40と4PIはやって来ることはなかった。

Date: 11月 20th, 2022
Cate: German Physiks, 終のスピーカー

終のスピーカー(Troubadour 40と4PI)がやって来た!!!

10月26日夕方に届いたメール。
そこには、「Troubadour 40と4PIを託したい」とあった。

Troubadour 40と4PI、
どちらもいつかは手に入れたいと思い続けてきたスピーカーユニットだ。
この二つのユニットを「託したい」とはどういうことなの?

とにかく急いでメール本文を読む。
すでに書いているように、そこには私にとって夢のような内容だった。

そして今日(11月20日)、メールをくださったSさんのところに行ってきた。
Troubadour 40と4PIが、
私にとっての終のスピーカーがやって来た。

満足のゆく音で鳴らすには、これからいろいろやることがある。
それはそれで楽しい日々のはず。

とにかく今日、終のスピーカーがやって来た、
このことがとても嬉しい。

Date: 11月 19th, 2022
Cate: ディスク/ブック

Beethoven · Schumann · Franck / Renaud Capuçon · Martha Argerich

“Beethoven · Schumann · Franck / Renaud Capuçon · Martha Argerich”、
ヴァイオリニストのルノー・カプソンとピアニストのマルタ・アルゲリッチによるライヴ録音。
TIDALで、MQA(48kHz)で聴いた。

2022年4月23日の録音だから、アルゲリッチは80歳。
でも演奏を聴いていると、とうていそんな高齢とはまったく思えない。
この人は、いったい何歳なのか、とおもってしまう。

みずみずしい。
アルゲリッチには、もっともっと長生きしてほしい。
90歳の演奏、100歳になっての演奏。それらを聴いていきたい。

Date: 11月 19th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックスとマンガー

ジャーマン・フィジックスとマンガーは、
どちらもドイツのスピーカーメーカーで、
ベンディングウェーヴ型ユニットを開発し製品化している。

ジャーマン・フィジックスを聴く機会はけっこうあった。
マンガーを聴いたことはわずかで、じっくり聴けた、とはいえない。
それでもマンガーの良さは感じている。

菅野先生は、ジャーマン・フィジックスを導入されたころ、
ジャーマン・フィジックスとマンガーの人たちと座談会をしたい、
話をいろいろききたい、と話されていた。

おそらくステレオサウンドの編集部にも、同じことを話されていた、と思う。