アルテックのModel 19に深い思い入れはないのだが、
ふと何かの機会で思い出す存在であることは確かだ。
私は、ステレオサウンド 43号の特集ベストバイで、
瀬川先生が書かれていることを読んでから、である、このスピーカーに関心をもつようになったのは。
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周波数特性のワイド化と、ユニットやエンクロージュアの無駄な共鳴音や夾雑音の類をできるかぎり抑え込むというのが新しいスピーカーの一般的な作り方だが、アルテックの新型は、周波数特性こそ従来の同社製品からは考えられないほど広帯域化しながら、キャビネットやホーンの共鳴音も適度に残してあって、それが何ともいえず暖かくふくよかな魅力ある音に聴こえ、新型であってもどこか懐かしさのようなものを感じさせる一因だろう。
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45号のスピーカーシステムの総テストでも、評価はよかった。
Model 19と同時にModel 15も登場していた。
型番からいっても、同じシリーズの兄弟機のように感じられるが、
アピアランスは随分違っていて、Model 15には魅力を感じなかったし、
Model 15のオーディオ雑誌での評価はあまりよくなかった。
アルテックもそのことは感じていたのだろう。
しばらくしてModel 14を発表している。
型番からすればModel 15の下のモデルのようであるが、
Model 15が当時189,000円(一本)に対し、Model 14は195,000円だった。
そして大事なことは、アピアランスはModel 19のそれと同じである。
Model 14は12インチ口径のウーファー搭載と、やや小型化されているが、
ホーンに関しては、
アルテックのコンシューマー用モデルとしてはいち早くマンタレーホーンを採用している。
Model 19のアピアランスの完成度はけっこう高い、と思っている。
決して、当時としての最新のスタイルではないが、見飽きないのだ。
いまから十数年前、あるオーディオ店にModel 19の中古が並んでいた。
ひさしぶりに見たModel 19だった。
その時も、やっぱりいいなぁ、と感じていた。
瀬川先生が、「続コンポーネントステレオのすすめ」でこう書かれている。
《私個人は、アルテックの鳴らす音の世界には、音の微妙な陰影の表現が欠けていて少しばかり楽天的に聴きとれるが、それでも、アルテックが極上のコンディションで鳴っているときの音の良さには思わず聴き惚れることがある。》
このことも思い出して眺めていた。