黄金の組合せ(その32)
黄金の組合せとは、誰が言い始めたことなのだろうか。
瀬川先生は、こう書かれている。
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もう十年ほど昔の話になると思うが、ある時期、本誌で「黄金の組合せ」とも呼ばれたコンポーネント・システムがあった。スピーカーがタンノイIIILZオリジナル。アンプがラックスSQ38F。カートリッジがオルトフォンSPU-GT(E)。
「黄金……」の名づけ親は、たぶん本誌編集長当たりかと思うが、その意味は、唯一最上というよりも、おそらく黄金比、黄金分割……などの、いわば「絶妙の」といった意味合いが濃いと思う。というは、右の組合せはご覧のように決して高価でも大型でもなく、むしろ簡潔で比較的手頃な価格であり、それでいて、少なくとも多くのクラシック音楽の愛好家が求めている音色の、最大公約数をうまく満たしてくれる鳴り方をした。いまでもまだ、この組合せのままレコードを楽しんでおられる愛好家は、決して少なくない筈だ。
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この瀬川先生の文章、読んだことがない──、
という人ばかりだろう。
ステレオサウンド 56号に、
「いま、私がいちばん妥当と思うコンポーネント組合せ法、あるいはグレードアップ法」が載っている。
瀬川先生の連載の開始だったのだが、
非常に残念なことに57号は休載、その後も載ることなく、瀬川先生は亡くなられている。
けれど原稿は書かれていた。
完全なかたちの原稿ではないけれど、
57号(もしくは58号)に掲載予定だった原稿の前半と後半が残っている。
その前半は、JBLの4343とロジャースのPM510のことから話は始まり、
黄金の組合せについてへテーマは移っていく。
黄金の組合せ、そして現代の黄金の組合せについて書かれる予定だった。