Doctor Strange in the Multiverse of Madness(その2)
私がいちばん映画を観ていたのは、20代のころである。
1980年代である。
あのころは休日ともなれば映画館をはしごしていた。
主に新宿の映画館を、一日で三館はしごしていた。
紀伊國屋書店の裏にあった映画の前売り券のみを扱っていたチケット店で、
上映されている作品の開始時間と終了時間を確認して、観る映画を決めていた。
このころはシネマコンプレックス(シネコン)は、まだなかった。
さすがは映画館! といいたくなる劇場もあったけれど、
老朽化している劇場も、まだまだ残っていた時代だ。
とにかく、この時代、邦画は敬遠していた。
なぜかといえば、音の悪い劇場が少なくなく、
セリフ(日本語)がひどく聞き取りにくいことがままあったからだ。
そして1980年代はAV(オーディオ・ヴィジュアル)時代の幕開けでもあった。
ステレオサウンドの姉妹誌であったサウンドボーイはHiViへと変っていった。
このころのハイエンドのホームシアターの実力は、
老朽化した劇場のクォリティを上廻っていた。
AVは、いつのころからかホームシアターと呼ばれるようになって、
さらにクォリティは向上していっている。
それでも──、といまは思う。
シネコンでIMAX 3Dで、きっちりとつくりこまれた作品を観ていると、
このクォリティは、ホームシアターでは無理だろう、と思ってしまう。
20代のころは、とにかく一本でも多くの映画を観たい──、
ということで映画館に行っていた。それはそれで楽しかった。
いまは、というと、IMAX 3Dでの映画を観るのがとても楽しい、と感じている。
それは私だけでなく、多くの人がそう感じているようだ。
20代のころは、スマートフォンはなかった。
映画を観るためのチケット購入は、劇場窓口かチケット店しかなかった。
いまはスマートフォンから買えるし、座席指定でもある。
私もそうやって買っているわけだが、
話題の作品の購入状況を見ると、IMAX 3Dのほうが人気があるようだ。
IMAX 3Dは通常料金に800円か900円が追加になる。
高いと感じるか安いと感じるか。
私はけっこう安いと感じている。
もちろん作品の出来が優れているという条件つきではあるが、
IMAX 3Dは新しい体験であるからだ。
そして思うのは、
ホームシアターで劇場でのIMAX 3Dと同じクォリティで観られるようになるのだろうか。