Archive for 10月, 2017

Date: 10月 3rd, 2017
Cate: 107, KEF

KEFがやって来た(その21)

KEFのModel 107/2が製造中止になった1995年、
その翌年ごろにロジャースからLS3/5A専用サブウーファーAB1が登場している。

サブウーファーL35BをLS3/5Aに追加したReference Systemの登場から約20年、
AB1はずいぶんと変貌したサブウーファーである。

Reference Systemがウーファーに専用アンプを必要とするバイアンプ駆動だったのに対し、
AB1はハイカットフィルターを内蔵し、ウーファー用にアンプを用意する必要はない。

使用ユニットもL35Bは33cm口径に対し、
AB1はLS3/5AのウーファーB110と同等・同口径のD110である。
(LS3/5Aと同じB110という記述もある)

エンクロージュアの大きさもずいぶん違う。
L35Bは外観からして33cm口径ウーファーをおさめた一般的なエンクロージュアに対し、
AB1はウーファーを内部におさめた、いわばケルトン型の一種である。
ロジャースでは、シンメトリカリー・ローデッド型と呼んでいる。

AB1ではダクトの位置はエンクロージュアの側面にあり、
互いに内側を向くようにセッティングするように指定されている。
AB1は、LS3/5Aをそのままトールボーイ型にしたようなかっこうだ。

Reference Systemは大がかりなシステムといえたが、
AB1には手軽さがある。

ロジャースはなぜケルトン型を採用したのか。
KEFのModel 107にヒントを得たのだろうか。

AB1は、現在もロジャース・ブランドから発売されている。
それだけでなくLS3/5Aのレプリカモデルで知られるStirling Broadcastからは、
改良型ともいえるAB2が出ている。

AB2には、元スペンドールのデレク・ヒューズが関っている、とのこと。

ダクトの位置と形状、内蔵しているウーファーの口径と数などに違いはあっても、
KEFのModel 107のウーファー部のエンクロージュアはトールボーイである。
AB1も、くり返しになるがトールボーイ型である。
どちらもケルトン型。

AB1の発売年といい、なにかしらModel 107との関連性を、
私のような者はどうしても感じとってしまう。

Date: 10月 2nd, 2017
Cate: 107, KEF

KEFがやって来た(その20)

1986年に登場したModel 107は1990年まで製造されている。
その後107/2という改良モデルが1995年までつくられていた。

Model 107/2には、Raymond Cooke special editionとつけられている。
107/2が製造中止になった1995年は、レイモンド・クックが亡くなった年でもある。

レイモンド・クックはModel 107の開発にいつごろから取りかかったのだろうか。
Model 105は試作品の段階から、瀬川先生は聴かれていた。
レイモンド・クックと1976年に長時間の対談と試聴されていることは、以前書いている。

レイモンド・クックは、Model 107に関しても、そうしたかったのではないだろうか。
でも瀬川先生は1981年に亡くなられている。

瀬川先生が生きておられたら……、と思うところがある。
まずKUBEの外付けのACアダプターである。
なんとも貧弱な作りである。

これは自分で作れば済むことだ。

もうひとつは、107のHEAD ASSEMBLYについてだ。
実物と約30年を経て再び対面するまで気づかなかったが、107のHEAD ASSEMBLYは水平方向だけである。
Model 105では水平方向だけでなく仰角の調整も可能だった。

Model 105とModel 107ではスピーカー全体の高さが違う。
背の高い107では、HEAD ASSEMBLYの仰角を調整する、
つまり上に向ける必要性はない、という判断からなのだろうか。

瀬川先生ならば、この点についてなんといわれただろうか、と考える。
同時に、先に書いたテーブルの天板をサブバッフルとする聴き方をする場合には、
仰角の調整を必要とすることになる。

ただスピーカー端子を修理する必要がある。
音を出していないのは、そのためだ。
そろそろ修理する。
そして来年あたり、audio wednesdayでも鳴らしたい、と考えている(運搬が面倒だけど)。

Date: 10月 2nd, 2017
Cate: 107, KEF

KEFがやって来た(その19)

1970年代にはウイングと呼ばれるサブバッフルを装着した、
もしくはオプションとして用意していたスピーカーシステムがあった。
アルテックのA7にもウイング付のモデルがあった。

音場感の再現には、スピーカーのバッフルの横幅は狭い方が有利だ、と、
1980年代からいわれている。
たしかにそうかもしれないが、
平面バッフルの音、昔あったフロントバッフルの面積の広いスピーカーシステムの音、
朗々と鳴ってくれる良さがある。

Model 107にサブバッフル(ウイング)をつけるとしたら、
いわゆる両サイドに垂直にバッフルをたてるのではなく、
トールボーイのエンクロージュアの上部と同じ高さに水平に用意することになる。

大きめのテーブルの天板を利用するのが、実際的である。
テーブルの天板左右に、四角い孔を開ける。
サイズは107のエンクロージュアの横幅と奥行きと同寸法の孔である。

テーブルの高さは、107のエンクロージュアの高さと同じにする。
約80cmほどである。
テーブルの高さとしてもいい具合である。

テーブルの天板がそのままサブバッフル(ウイング)となるかっこうだ。
視覚的にはウーファーのエンクロージュアは隠れることになる。

その前にあるのは、HEAD ASSEMBLYだけ、となる。
何も知らない人がみたら、
テーブルの両端にダルマみたいな小型スピーカーがあるくらいの認識だろう。

けれど鳴ってくる音は、本格的な音である。
Model 107をバイロイト祝祭劇場的に重ねてみていくと、
この使い方のほうが、よりバイロイト的に思えてくる。

Date: 10月 2nd, 2017
Cate: 107, KEF

KEFがやって来た(その18)

アクティヴイコライザーのKUBEだけでもない、
アンプ側からみたスピーカーのインピーダンスを一定にするCLMだけでもない、
その両方を組み合わせているところが、
専用アンプを用意せずに……という条件での、ひとつのやり方といえる。

Model 107の音はまだ鳴らしていないから、
KUBEとCLMから成るハイブリッドクロスオーバーの効用がどの程度なのか、
耳で確かめることは、もう少し先になるが、
やはり気になるのは、
エンクロージュア上部に設けられているダクト開口部からの160Hz以下の低音が、
HEAD ASSEMBLYが受け持つ中高域にどれだけ影響を及ぼすのかである。

いわば、開口部からの音は、音のカーテンとして作用するのではないか。
そのことはレイモンド・クックも気づいていた、と思う。

通常のバスレフポートからの音の放射は、けっこうな音圧になることがある。
ヤマハのAST1のバスレフポートからの放射は、負性インピーダンス駆動ということもあって、
かなりのものだった。

そうなるとポート内でのノイズの発生が問題となってくる。
AST1ではポートの内側にフェルトが貼ってあった。
それも柔軟剤で仕上げたフェルトである。

無線と実験の当時の記事だったと記憶しているが、
ヤマハは柔軟剤もいろいろ集めてテストしたそうだ。
結果的には一般に市販されている柔軟剤を使用している。

バスレフポートの材質、形状(とくに開口部の形状)などは、
聴感上のS/N比に直接関係してくる。

ヤマハのAST方式やKEFのCoupled Cavity方式は、通常のバスレフ型以上に関係してくる。
そのことにレイモンド・クックが気づいていないわけがない。
それでもエンクロージュア上部に設けている。

たとえばトールボーイのエンクロージュアの前面上部に前向きに開口部をつければ、
上記のような問題はずっと軽減される。

音源の面積としても、HEAD ASSEMBLYとの距離もほとんど変らずに、
開口部の音の放射による中高域へのあおりを、そうとうに軽減できるはずなのに、
それでも、あの位置なのか。

そのことを考えれば考えるほどに、バイロイト祝祭劇場のことがイメージとして重なってくるし、
もうひとつのModel 107のセッティングへの関心が強くなってくる。

Date: 10月 1st, 2017
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Designという手法(その44)

ストコフスキーの録音も、ライナーの録音も、
年代からいえば真空管の器材での録音である。

ヤマハのプレゼンテーションでは、最新の録音もあった。
ハイビット、ハイサンプリングの録音は、
ストコフスキー、ライナーの録音と比較すまるでもなく、
ほぼノーノイズといえるレベルであり、
ストコフスキー、ライナーの録音には、当時の器材の発するノイズも含まれてのものである。

にもかかわらずストコフスキー、ライナーの音の見事なこと。
結局は、ノイズがあるおかげだ、と私は判断する。

NS5000の試作機から最終モデルにいたる過程は、深くは知りようがない。
聴いて分るのは、聴感上のS/N比が向上していることであり、
その聴感上のS/N比の向上のためにヤマハがしたことは、
少なくとも私は裏目に出ているように感じる。

S/N比をよくするということは、信号のレベルを高くするか、
ノイズのレベルを低くするか、もしくはその両方である。

ここではノイズのレベルをできるだけ抑えようという手法だったのだろう。
確かに、ある意味成功しているとはいえる。
けれど音を聴くと、ノイズを抑えたことによって、試作機にあった良さも抑え込まれた。
試作機の音がいまも耳に残っている私には、そう聴こえる。

ノイズも音のうちである。
井上先生が以前からいわれてきたことである。
まったくそのとおりであって、ノイズの扱いは難しいともいえる。

今回NS5000の、ストコフスキー、ライナーのディスクでの音は素晴らしさは、
試作機から最終モデルの過程で失われてしまったなにかを、
録音のノイズがうまく補ってくれた結果ではないのか。