Noise Control/Noise Designという手法(その44)
ストコフスキーの録音も、ライナーの録音も、
年代からいえば真空管の器材での録音である。
ヤマハのプレゼンテーションでは、最新の録音もあった。
ハイビット、ハイサンプリングの録音は、
ストコフスキー、ライナーの録音と比較すまるでもなく、
ほぼノーノイズといえるレベルであり、
ストコフスキー、ライナーの録音には、当時の器材の発するノイズも含まれてのものである。
にもかかわらずストコフスキー、ライナーの音の見事なこと。
結局は、ノイズがあるおかげだ、と私は判断する。
NS5000の試作機から最終モデルにいたる過程は、深くは知りようがない。
聴いて分るのは、聴感上のS/N比が向上していることであり、
その聴感上のS/N比の向上のためにヤマハがしたことは、
少なくとも私は裏目に出ているように感じる。
S/N比をよくするということは、信号のレベルを高くするか、
ノイズのレベルを低くするか、もしくはその両方である。
ここではノイズのレベルをできるだけ抑えようという手法だったのだろう。
確かに、ある意味成功しているとはいえる。
けれど音を聴くと、ノイズを抑えたことによって、試作機にあった良さも抑え込まれた。
試作機の音がいまも耳に残っている私には、そう聴こえる。
ノイズも音のうちである。
井上先生が以前からいわれてきたことである。
まったくそのとおりであって、ノイズの扱いは難しいともいえる。
今回NS5000の、ストコフスキー、ライナーのディスクでの音は素晴らしさは、
試作機から最終モデルの過程で失われてしまったなにかを、
録音のノイズがうまく補ってくれた結果ではないのか。