Archive for 8月, 2013

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その5)

一時期、ワンブランドシステムとかワンブランドオーディオという言葉が雑誌を飾っていた。
マッキントッシュ、B&O、QUADといった、
音の入口から出口まで揃えているメーカーでシステムを統一する。

マッキントッシュのCDプレーヤー、マッキントッシュのチューナー、マッキントッシュのコントロールアンプ、
マッキントッシュのパワーアンプ、マッキントッシュのスピーカーシステム、
とすべてマッキントッシュの製品で揃えればデザインでの統一と音質・音色での統一が得られる。

B&O、QUADもワンブランドですべて揃えてしまうことで得られるものが確実にある。
同時に得られないものもあるわけで、
結局はどちらを重視するかにより、人はワンブランドを選択したりそうでなかったりする。

ワンブランドオーディオ、ワンブランドシステムという言葉が登場する以前は、
シスコンという言葉があった。
システムコンポーネントの略語である。

これもワンブランドで統一されたシステムであるわけだが、
メーカーのお仕着せということと、それにどちらかといえば安価なシステムが多かったこともあり、
初心者向きという認識であった。

このシスコンに対して、バラコンというのがあった。
バラコン──、バラバラにスピーカーやアンプを買ってきてコンポーネントを組み合わせるから、
つまりバラバラのコンポーネントという略語であった。
瀬川先生は、こんな言葉は使いたくない、使わない、といわれていたのを思い出す。

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その4)

自分にとって、ほんとうに求めていたスピーカーシステムと早々に巡りあえることは、まずない。
いくつものスピーカーシステムを自分で鳴らしてこなければ、まず無理である。

その意味では「このアンプに合うスピーカーはなんですか」
と質問してくる人のことがまったく理解できないわけではない。
それでも、スピーカーシステムは自分で見つけるもの(モノ)である。

いつかは、きっとスピーカーシステムが見つかる。
それがどのくらいかかるのかは、なんともいえない。
幸運にも一年くらいで見つかる人もいるだろうし、
十年かかって見つけた人だっている。
それ以上の年月をかけているけれど、まだ見つからない……、という人もいよう。

それまでは、すでにシステムをつくっている。
一度にすべてのオーディオ機器を、欲しいモノを買える人もいるけれど、
私を含めて多くの人は、すこしずつグレードアップしていく。

プレーヤーにしても、アンプにしても、
自分にとってほんとうに求めていたスピーカーシステムが見つかるまでに、
いったい何度入れ換えているだろうか。

そうやっていっていると、往々にしてそれぞれのオーディオ機器のデザインに関しては、
じつにバラバラになってしまいがちだ。

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その3)

1967年、オーディオ機器へ物品税がかかるようになり、
それまでは部品扱いだったアンプやスピーカー、プレーヤーが、完成品とみなされるようになった。

車は車一台で車としての機能を持っている。
けれどオーディオ機器の場合、アンプだけを買ってきても、それだけでは音は出てこない。
スピーカーシステムにしてもプレーヤーシステムにしても同じで、
レコードを聴くには最低でもプレーヤーシステムとアンプ、
それにスピーカーシステム、もしくはヘッドフォンを買ってこなければならない。

その意味では、確かにオーディオ機器は「部品」という見方ができる。
その「部品」を買ってきて、自分のためのシステムを構築する。

システムとは「個々の要素が有機的に組み合わされた、まとまりをもつ全体。体系」と辞書にはある。
まとまり・まとまるとは「ばらばらであったものが集まってひとつになる。また統一のある集まりとなる」ことだ。

ばらばらであったものが集まるには、中心となるもの(モノ)があってこそ、成り立つのではないのだろうか。
中心がなければ、ばらばらであったものは、いつまでたってもばらばらである。

オーディオというシステムにおいて、中心となるのはスピーカーシステムということになる。
まずスピーカーありきで、組合せを考えることは始まる。

ずっと以前は、多くのオーディオ雑誌にあった相談コーナーのページで、
「このアンプに合うスピーカーはなんですか」と読者の質問が少なからずあった。
いまでもインターネットに、昔と同じようにあるようだが、
いまも昔も、くり返すが、まずスピーカーありき、である。

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その2)

たとえばラックスのコントロールアンプCL32は128000円、キットのA3032は88000円、
CL30は169000円、キットのA3400は108000円、
パワーアンプのMB3045は128000円(一台)、キットのA3000は79000円(一台)だった。

物品税の分だけ安いともいえるし、
そのメーカーでの組み立てにかかるコストも省けるから,ともいえるわけだが、
キットにはキットならではの苦労が、メーカーにはあったはずだ。

キットを購入して組み立てる人の技術が、どの程度なのかはばらばらのはず。
自分で回路設計もできてコンストラクションまで考える人もいるば、
ハンダゴテを握るのも初めて、とにかく安く買えるから、という人までいたと思う。

当然ハンダ付けの技術もワイヤリングの技術もまったく異る人たち向けにキットは売られている。
技術のある人ならば問題なく組み立て、調整し、完成品とまったく変わらぬモノを安く手にできる人もいる反面、
まともに組み立てられずメーカーに送る、という人もいた。

それに対してもメーカーとしてはアフターサービスとして、きちんと対応していた、と思う。
このコストは、完成品が故障で戻ってくるのよりも、ずっとかかっていたのではなかろうか。

キットの販売は大変だったはずだ。
それをラックスは長年やってくれていた。
私自身はラックスキットを購入したことはないけれど、
キットという存在はオーディオの勉強の教材としても存在していた。

物品税は1989年の消費税導入によってなくなった。
そうなると製品でもキットでも、消費税率は同じになる。

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その1)

1970年代、1980年代は各メーカーからキットが発売されていた。
有名なところではラックスキットがあった。

キットといえば初心者向きのモノと受けとられがちだが、
ラックスキットは充実していた。

たとえばラックスの管球式パワーアンプMB3045のキットはA3000、
MQ60のキットはKMQ60、
その他にもキットのみのモデルもあった。

コントロールアンプもCL32のキットがA3032、
CL30のキットがA3400として出ていた。

アメリカではダイナコの真空管アンプのキットも有名だった。

その他にもキットはいくつもあった。
ターンテーブルのキットもあり、アンプ、スピーカー、
それにデヴァイディングネットワーク(チャンネルデヴァイダー)もあった。
システムのほとんどをキットで揃えることもできた。

キットがこれだけ充実していたのには、物品税という理由がある。

昭和42年(1967年)、それまで部品扱いで非課税だったオーディオ機器に物品税がかけられることになった。
物品税は15%が基本で、いきなり15%もの課税になると、一挙にオーディオ機器の価格は高くなる。
そのため5%ずつ上げる、という猶予が与えられた。

そうなってもキットは、部品扱いだったため15%の物品税は関係ない。
だからキット販売は、価格をかなり抑えることができた。

Date: 8月 20th, 2013
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その49・続×七 番外)

今回考えた組合せの、音の中心となるのはウエスギのU·BROS2011Pではないかと想像している。
実際のところ、組合せをつくり音をまとめていく過程で、スピーカーシステムのGX250MGが中心になるのか、
それとも私の想像しているようにU·BROS2011Pになるのかが、はっきりする。

それでもU·BROS2011Pを音の中心に据えて音をまとめていくというのも、ひとつの手法としてある。

では今回の組合せのデザインの中心となるのは、どれなのか。
全体のデザインの統一感はなくとも、どれかひとつ秀でたデザインのモノがあれば、
組合せ全体のイメージがずいぶん変ってくるのだが、
ここでは中心となるモノはない──、そんな気がする。

たとえばデザイン面の統一感を重視してコントロールアンプもCDプレーヤーもアキュフェーズに変更したとする。
システムの半分以上がアキュフェーズになれば、見た目の統一感は増す。
増すけれど、それでアキュフェーズのコントロールアンプなりCDプレーヤーが、
パワーアンプでもいいのだが、これらのひとつがデザインの中心になってくれるとは考えにくい。

アキュフェーズのデザインに関して、高く評価する人は割と多い。
私は、正直、いまのアキュフェーズの一連のデザインに関しては、どこか薄さを感じてしまう。
そのことが、それまで私のなかで積み重なってきたアキュフェーズの印象と少しずつ離れていくところがあり、
このままアキュフェーズのデザインは、この方向で展開していくのだとすれば、
いろいろとおもうところがある。

デザインに関しては、フォステクスのGX250MGもそうだ。
あえて、こういう外観にしているのだろうが、あまりにも魅力に欠ける。

今回の組合せはデザインの中心となるモノがないから、よけいにそれぞれの機器のデザインが気になってくる。

Date: 8月 20th, 2013
Cate: 音の毒

「はだしのゲン」(その2)

私が長崎原爆資料館に行ったのは、もう40年ほど前のこと。
そのときの建物は新しくはなかった。
どちらかといえば暗い感じのする建物だった記憶がある。
少なくとも近代的な明るい印象の建物ではなかった。

そんな資料館の中に展示されているものをひとつずつ見てまわった。
できれば見たくない、と思っていたような気もする。
でも、すべてをきちんと見なければ、と小学生ながらに思ってもいた。

いくつかはひどく記憶に残って、
しばらくはそのイメージが頭から消し去ることができなかった。

修学旅行は小学五年のときだった。
ぺちゃくちゃしゃべりながら行動をしがちの年ごろだったけれど、皆無口だった。
妙に静かだった。

心の中では、どういう言葉を発していたのかはわからない。
でも皆黙っていた。
湿気がまとわりつくような感じも記憶に残っている。

長崎原爆資料館の外に出たら、
自転車で小さな屋台をひいて、アイスを売っている人がいた。
長崎名物の氷のつぶがはいったアイスだ。

このアイスを食べて、ほっとした、というか、やっとほっとできた。

Date: 8月 20th, 2013
Cate: 複雑な幼稚性

「複雑な幼稚性」(虎の威を借る狐)

「虎の威を借る狐ですね」と誰かにいわれたら、たいていの人はむっとする。
「虎の威を借る狐」は他人の権勢をかさに着て威張る小人(しょうじん)のたとえと辞書にはある。

侮辱されているのだから、むっとしたり怒ったりしたり当然なのだが、
この数年、感じているのは、「虎を威を借る狐」はまだましなほうなのだと思うことである。

すくなくとも、この狐は、虎が強いことを知っている。
自分で虎が強いということを判断した上で、「虎の威を借る」わけだ。
この狐は、ある意味賢いし、狡い。
それでも、的確な判断を下している。

私が「虎の威を借る狐」がまだましと感じているか、というと、
「虎の威を借る狐」、この狐の威を借るなにものかがあらわれて増えてきたように感じるからだ。

「虎の威を借る狐」、この狐の威を借るなにものかは、
もうすでに誰が、何が強いのかを判断できなくなっている、そのことがわからなくなっている。
だから、そんな狐の威を借ることになる。

私には、「虎の威を借る狐」にみえるものが、別の人には虎に見えているのかもしれない。
人それぞれといってしまえばそれまでのことなのだが、
オーディオ機器について書かれているものをインターネットで読むときに、
あるときはある販売店のある店員に、
(むしろオーディオ以外のことで感じることが多いのだが)
「虎の威を借る狐」、その狐を威を借るなにものか的な要素を感じてしまうと、
「虎の威を借る狐」はまだストレートだったんだなぁ……、と思い、
これも複雑な幼稚性なのかとも思ってしまう。

Date: 8月 20th, 2013
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その49・続×六 番外)

ラックスのアナログプレーヤーといえば、PD121がある。
PD121を知る者、憧れた者には、 現行のPD171のデザインにはついあれこれいいたくなってしまう。
でも、国産のアナログプレーヤーとして、決して高価すぎない、
しかも大きすぎない、大袈裟すぎない製品を、他に見つけることは難しいのだから、黙っておこう。

それでも書いておきたいのは、何も知らずはPD171を見せられたら、
ラックスのアナログプレーヤーとは思えない、ということだ。

価格的なバランスをくずして、もう少し安いところまでみれば、
デノンのDP1300MKIIがある。
そのくらいだろうか。

私の中では、テクニクス、デンオン、ビクターはダイレクトドライヴ御三家だった。
この中でいまもアナログプレーヤーを製造しているのはデノン(デンオン)だけなのは、
時代の流れなのだから、そういうものだと受けとめるしかないのだが、
それにしても、ラックスのPD171、デノンのDP1300MKIIにしても、
せっかく、こういう時代にアナログプレーヤーをつくっているのだから、
いつの時代のアナログプレーヤーなのか、と見る者が判断を迷うようなデザインではなく、
これまでのキャリアがあるのだから、それに見合うだけの洗練したモノが欲しいところである。

アナログプレーヤーと比較すると、CDプレーヤーの選択肢は多い。
国産のCDプレーヤーという制約をつけても、マランツ、デノン、アキュフェーズ、ラックス、エソテリックがある。

これらのモデルであれば、どれを選んでも間違いはない。

こうやって組合せができたわけだが、
組合せをあれこれ考えているときから感じていたことがある。
音のことではなく、組合せ全体のデザインのことである。

Date: 8月 20th, 2013
Cate: 音の毒
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「はだしのゲン」(その1)

私が生れ育った田舎町にも昔は映画館があった。
中学生になったころにはもうなくなっていた。

古い、ボロい映画館だった。
いわゆる名画座で、二本立て、三本立てで上映されていた。
話題の映画はバスに一時間ちょっと揺られたところにある映画館に行く。

地元の、そんな映画館で観ていたのは、学校推薦の映画であったりした。
何本か観ているのだが、ほとんど記憶には残っていない。
でも、一本だけ強烈に記憶に残っている映画がある。

タイトルはもう憶えていない。
ストーリーもうろ覚えだ。
なのにいまも憶えているのは、観ていて気持悪くなった映画だったからだ。

第二次大戦の、どこかの島での話だった。
終戦近いころの話だったはず。
極限状態に追い込まれた日本兵が描かれていた。

そんな映画を、小学校低学年の時に観ている。
吐きそうになる寸前の、気持悪くなるシーンもあった。
いま思うと、よくこういう映画が学校推薦になったな、と思わなくもない。

映画が終り、外に出た時にほっとしたことも、強烈に憶えている。
昼間の太陽の光が、こんなにも人の気持を一瞬にして変えてくれるものだと感じたのは、
その数年後、小学校の修学旅行で行った長崎原爆資料館を見終り、館の外に出た時も同じだった。

Date: 8月 20th, 2013
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その49・続×五 番外)

ステレオサウンド 185号のベストバイにて、
黛さんがウエスギのU·BROS2011Pのフォノイコライザーについて書かれている。
     *
特にフォノイコライザーは秀逸。鋭すぎず、柔らかすぎることもない中庸を得た音で、空間感もよく表現されている。音には勢いがあり、活き活きとしていて、棚の奥に仕舞い込んであるアナログLPレコードのコレクションをあらためて聴き直したくなるほど蠱惑的な音だ。ヴォーカルの潤いが出色!
     *
U·BROS2011Pを購入対象と考える人は、ある年齢以上の人が多いと思う。
560000円のコントロールアンプを購入できる経済力のある人でも、
20代の若い世代の人が欲しくなるアンプとは思えない。

いくつものコントロールアンプを自分のモノとして使ってきた人こそが、
購入対象として考えるのが、U·BROS2011Pではないだろうか。

そういう人ならばアナログディスクもコレクションも充実していよう。
U·BROS2011Pはフォノイコライザーの音がいいことは、わかった。

だが50万円前後のアナログプレーヤー、
それも日本のモノとなると、これもいつのまにかこんな状況になっていたのかと驚く。

ステレオサウンド 185号のベストバイに選ばれている国産プレーヤーは、
テクダスのAir Force One、
オーディオノートのGINGA 2012、
ラックスのPD171だけである。
Air Force OneとGINGA 2012は600万円をこえる。

PD171だけが条件に合う、ただひとつの国産プレーヤーとなる。

あくまでもステレオサウンド 185号を参考にしているから、
こうなってしまうが、あれこれ調べても結果は大きくは違わないはず。

Date: 8月 19th, 2013
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(編集部とは・その7)

これもまたずっと以前の話になるが、
黒田先生は、試聴テストに参加する自分のことを、モルモットと表現されていた。

黒田先生の職業は音楽評論家である。
レコードで音楽を聴くことも大好きな黒田先生は、オーディオ、音ということにも強い興味をもち、
ステレオサウンドの試聴テストにも参加されていた。

オーディオに強い興味・関心はあっても、
当時のステレオサウンドで活躍されていたオーディオ評論家を基準とすれば、
オーディオに関しての知識はないに等しいわけだからこそ、
オーディオの技術的なこと、ブランドの歴史や知名度のことなどはいっさい考慮せずに、
ただひたすらスピーカーから出てくる音に素直に反応する、という意味でのモルモットである。

音楽への理解が深く、耳のいい人、
つまり黒田先生、
それから黒田先生の教え子であり、一時期ステレオサウンドの試聴テストに参加されていた草野次郎氏、
こういう人がいてくれる(いてくれた)ことは、編集者にとっても企画をたてていくうえで、
刺戟でもありありがたい存在でもある。

だが黒田先生、草野氏が、だからといって、
ステレオサウンド・グランプリやベストバイの選考に加わるということは絶対にない。
選考委員になるということは、はっきりとオーディオ評論家であるべきなのだから。

こういう賞は、それだからこそ本来の意味があるのだから……。

Date: 8月 19th, 2013
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(編集部とは・その6)

ずっと以前の記事である。
だから、いまのステレオサウンドの編集者が、あの号が出た時に読んでいないことだって考えられる。
けれど、ステレオサウンドの編集者は会社にいけば、過去のステレオサウンドはすべて揃っているわけだから、
いままで読むことができなかった過去の号もじっくりと読むことができる。

その号を、いまの編集部の人たちが、誰かひとりでもいいから、きちんと読んで理解していれば、
今回のことは編集部で防ぐことができた。
これは、なんら難しいことでも、特別なことでもない。

編集者ならば、当り前のことである。
その当り前のことをやらなかったのか、やれなかったのか、は部外者の私にはわからないが、
とにかく活字として世の中に出てしまった。

もしかすると、編集者は小さな記事のちいさなミス程度に思っているのかもしれない。
これも部外者の私にはわからないことだが、
すくなくとも、今回のことは、これまでステレオサウンドを積み上げてきたものをこわすことにつながっていく。
そして、ベテラン筆者のキャリアをも傷つけていくことになる。

さらには、その筆者はベストバイ、ステレオサウンド・グランプリの選考委員でもある。
結局、この人はオーディオの技術のことはなにもわかっていなんじゃないか、
そう思われてしまったら、そういう人が選考委員をしている賞とは、いったい何なのか……、
ということにもなっていくと思う。

オーディオ評論家は、耳がよければそれでいいじゃないか、
技術のことは素人でもいいのではないか、
そう考える人もいるかもしれないが、
そういう人は、いわばオーディオのテスターであり、いわばモルモットである。
(これは決して否定的な意味でのモルモットということではない)

Date: 8月 19th, 2013
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(編集部とは・その5)

1976年に、スレッショルドのデビュー作、そしてネルソン・パスの最初のアンプ、800Aが日本に入ってきた。
ファンによる空冷方式をとっていたけれど、A級動作で200W+200Wの出力をもつというふれこみだった。

そのころパイオニアのExclusive M4がやはりA級動作で、
しかもM4もファンによる空冷方式をとりながらも、出力は50W+50Wだから、
800Aの200W+200Wは驚異的な値だった。

詳しい技術内容が伝わってこなかったから、
最初はA級アンプということだったが、のちに可変バイアス方式のアンプであることが判明、
そしてこの回路技術は日本のアンプメーカーに大きな刺戟となっていった。

いくつものA級動作を謳う回路方式が誕生した。
高能率A級というえる回路もあったし、ノンスイッチングという意味でのA級という呼称をとっているものもあった。

この時期、ステレオサウンドでも、各社のバイアス回路を中心に、これらの回路技術の解説の記事をつくっている。
このときの筆者が、実は今回A級動作のアンプの発熱量に関しては、まったくのでたらめを書いた人だった。

ずっと以前のことだから、いまのステレオサウンドの読者の中には読んでいない人もいても不思議ではない。
だが、この記事を読んでいて、記憶のいい人ならば、
いったい、あの記事はなんだったのか……、という思っていることだろう。

結局、あの記事は本人が理解して書いていたのか、
そうだとしたら、なぜ今回のような間違いを犯してしまうのか、と思う。

あの記事は、当時、私はいい記事だと思っていた。
各メーカーの技術者に、他社の回路をどう見ているのか、まで取材してあり、
いま読み返しても、良心的な記事と呼べる。

だからいっそう、今回のことが不思議でならない。

Date: 8月 18th, 2013
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その49・続々続々番外)

妄想組合せといって、目的はあり、そして制約をもうけている。
今回の、この組合せでの制約は国産のオーディオ機器で組合せをまとめるということが、ひとつある。

だからパワーアンプも50万円前後の国産のモノということになるわけだが、
いまどんな製品があるのかと参考までにステレオサウンド 185号のベストバイの記事を見ていたら、
ラックスのソリッドステートのアンプがセパレートアンプでは登場していないことに気づいた。

コントロールアンプはCL38u、パワーアンプはMQ88uと、どちらも真空管アンプである。
現行製品でソリッドステートのセパレートアンプがないわけではない。
にも関わらずベストバイには登場していない、ということは、
ラックスのソリッドステートのアンプは、どれも数年前に登場したモノだから、
いわゆる古い製品ということになってしまっているのだろうか。

185号のベストバイの記事を元に、50万円前後の国産のソリッドステートのパワーアンプとなると、
アキュフェーズのみとなってしまう。
ベストバイの記事はほとんど読んでいない(見ていない)ので、
こうやって久しぶりに見ると、ずいぶん様変りしてしまった印象を受けてしまう。

アキュフェーズのパワーアンプきなると、470000円のP4100と600000円のA46がある。
アキュフェーズのアンプだから、こまかな説明は不要だろう。
どちらも選んでも、いい結果が得られると思う。
それでもあえて私が自分で使うアンプとして選ぶならば、A46にする。

A級動作ゆえに出力は45W+45W(8Ω負荷)と大きくはないが、
GX250MGのインピーダンスは4Ωなので、出力は倍の90W+90Wとなる。

この組合せの目的である、音楽を聴くのを億劫がっているときに、音楽を聴きたくなるシステムでは、
出力に不足を感じることは、ほとんどないだろう。

これで組合せのめどが立った。
コントロールアンプはウエスギのU·BROS2011P、
パワーアンプはアキュフェーズのA46、
スピーカーシステムはフォステクスのGX250MG。

実際に、その音を聴いていないとはいえ、この組合せから変な音がするようなことはないはずだ。
もしかすると期待よりもいくぶん落ちるところがあったとしても、
チューニングをしっかりやれば、それは充分にカバーできる範囲に収まるだろう。

あと決めるのはCDプレーヤーとアナログプレーヤーである。
U·BROS2011Pにはフォノイコライザーがついている。
これを活かしたいのだが……。